産経新聞記者への公開状

 

日本僑報社編集長・日中交流研究所長

段 躍 中

 

 

8月3日付けの在日中国人新聞「華人週報」に掲載された論評記事を読み、7月26日付の産経新聞に在日中国人メディアに関する記事が掲載されたことを知りました。インターネットでその記事の原文を見つけて読んだとたん、非常に驚き、憤りを感じました。6月下旬に記者の取材を受けた際の私の発言が引用されているようだったけれども、一部は読者の誤解を誘うような引用の仕方であるし、一部は内容が曲解され私の発言意図とまったく異なり、一箇所については言った覚えのない発言がでっちあげられており、私の政治的立場が誤解される要因になることは間違いありません。これまでの我々の活動をよく知る人ならば、このような記事は無視できますが、この記事によってはじめて私を知る人は、日本人であれ中国人であれ、大いに誤解することでしょう。

私はその日の夜23時13分、産経記者比護氏宛に直接、抗議メールを送りましたが、一週間経っても返信がありませんでしたので、ここに公開状の形で強く抗議します。

 

まず、記事原文から問題の部分を抜き出し、それぞれどのように私の発言を歪曲し、でっちあげ、利用したかについて、指摘しましょう。

 

-----記事原文より------

(前略)

だが、日本国内で発行されている中国語新聞・雑誌の大多数は中国政府を批判する記事を載せないのが特徴だ。

ある日中関係筋は、「中国人向けマスコミの中には経営者や記者が定期的に大使館に呼び出され、指導を受けているところがある。本国の意向に反する記事を掲載したら、パスポート更新をはじめ、嫌がらせを受ける可能性があるからだ。逆に意向に沿った記事を載せれば広告の便宜や事業で大使館に後援してもらいやすいのでメリットがある」と明かす。

在日中国人の活動を紹介する情報誌「日本僑報」を創刊し、出版活動やメールマガジンを運営する段躍中・日中交流研究所長は「政府の息がかかっている媒体もある」と関係筋の話を裏付ける。段氏によれば、「中国政府はインタ−ネットを自分の意見を述ベる道具に使おうとしている。それは中国政府関連のホームページで日本語表記が充実しつつあることなどをみれば分かる」という。日本国内向け中国系マスコミの中には「北京週報」の日本語版などがインターネット版を開始、対日宣伝機能の強化をはかる動きが出ている。

(後略)

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【「ある日中関係筋」の話を裏付ける?】

取材時、確かにこの「ある日中関係筋」の話(大使館の指導等)が真実か否かと問われたことはありました。しかしその時私ははっきりと、再三、「そのようなことは聞いたことがない」と、この話を否定しています! まして「政府の息がかかっている媒体もある」などということは一切言っていません。日本語語彙の不足を露呈するようで恥ずかしいのですが、「息がかかっている」という言葉自体、この記事を読んで初めて知ったのです。

さて、一体私のどの発言が、「裏付け」になっていると言うのでしょうか。

 

【政府とインターネット】

私は取材の中で、最近のインターネットにおける言論活動について、次のように述べました。「中国のインターネット人口はますます増加しており、最新の統計では既に一億人を超えたという。そのような中で、政府はインターネットにおける言論をコントロールしにくくなっており、活字メディアに比べてインターネットは言論活動が比較的自由。政府や幹部に対する批判的言論はもちろん、日本に対する批判も多く書かれている。」この発言は記事にはまったく取り上げられていない上、「中国政府がインターネットを自分の意見を述べる道具にしている」という、まるで中国政府がインターネットを統制していると思わせるようなこの文は、私の発言とは完全にズレています。

 

【北京週報】

取材時に、私は確かに日本語版「北京週報」の名を挙げました。しかしそれは、「中国政府は対日宣伝が下手だ」という事例のひとつとして、です。「北京週報は数十年にわたって対日宣伝の老舗雑誌として大きな役割を果たしてきたが、数年前に印刷版を停刊し、インターネット版のみになった。私はこれを対日宣伝政策として下策だと思う。日本にはまだまだインターネットを使わない年配の方も多く、長年その印刷版雑誌を購読・収蔵してきた人々や図書館にとっても重要な情報源だったはず。」私は取材時にそう述べています。

ですので、私にとって、北京週報のインターネット化によって「対日宣伝機能の強化をはかる動きが出ている」という結論は、まったく思いも寄らないものでした。

北京週報について書かれた部分は私の発言だとしているわけではありませんが、私の発言(とされている)部分の後に続けて書けば、「この意見は段の発言に基づくものである」という誤解を生むでしょう。

 

このように、この記事では、私の発言が歪曲した形で利用され、また一部の発言はでっち上げられています。

また、真面目な新聞社、新聞記者ならば、取材時の発言を引用する際は、取材を録音し、掲載前に案内や確認があってしかるべきです。そして掲載後は取材先に知らせて掲載紙を送付するのが当然ではないのでしょうか。この記事はそのようなプロセスをまったく経ていません。大変非常識だと思います。

そして何より、真実を報道するという任務を負うべきメディアが、人の発言を歪曲して利用したり、発言をでっち上げるなどということは、あってはならないことです。

 

私は、この記事の訂正と、記者および新聞社からの謝罪を強く求めます。

 

2006.8.9 

 

 

 

産経新聞記者への公開状(2

 

 

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