黄安琪さんの訪日報告
-黄安琪さんからメールが届きました-
第14回 中国人の日本語作文コンクール日本大使賞受賞者
復旦大学 黄安琪
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訪日の感想――「相手国とのご縁を大事にすることが重要」
 この度は「第14回中国人の日本語作文コンクール」において最優秀賞(日本大使賞)をいただき、また、副賞として日本に招待していただき、すごく光栄で嬉しく思います。

 あっという間に1週間が過ぎました。短かったですが、最高の思い出になりました。段先生、コンクール関係者の皆様のおかげで、元総理大臣をはじめ、日本の政治家、外交官、実業家、大学教授等、日中友好の最前線で活躍する先輩たちとお会いでき、お話をうかがえて、大変勉強になりました。また、NHKのラジオ番組で生出演したり、国会議員会館の記者会見で発表したり、日中教育文化交流シンポジウムに参加したり、色々貴重な体験ができました。日本自体は五度目の訪問でしたが、中国の若者の代表として日中交流の視点から活動できたことは、私の人生にとって大きな糧になったと思います。

 日中友好の分野で活躍しておられる方々のお話は、非常に示唆に富んでいます。過去に両国の各界各層の皆さんの努力があったからこそ、日中関係が非常に良好となった今があります。お話をうかがう中でも、先生たちのご苦労やご努力に感動しました。こうした先生たちの情熱に対して、改めて深い敬意と感謝の気持ちを表したいと思います。表敬訪問では、日中間の友好交流や日中両国の相違点などの大きな話題から、私の趣味や家族のこと、卒業後の進路などの個人的なことまで、暖かく会話を重ねました。日本の政治家や外交官の方々は皆さんとても優しくてユーモアがあり、いつも笑顔で私に接してくれて、素敵なプレゼントをくださり、すごく感動しました。先生たちのご活躍は私のような若い世代の心の支えになり、未来に向けて前を向く一助になりました。

 訪日活動の最終日、日中教育文化交流シンポジウムでは、日中の若者たちが自分の国の歴史や文化、政治、経済など多様な分野の話題に触れ、お互いを尊重しながら語り合い、お互いの本音を聞くことができました。皆は初対面であったにもかかわらず、非常に優しくて、率直な意見を言いやすい雰囲気ができていました。国や文化は違っていても同じ若者として自分の意見を伝え、相手の意見を尊重し合い、これほどまでに交流を深められた事は、とても素晴らしかったと思います。

 日本は、何回行っても新しい魅力を発見できる国だと思います。受賞作文に書いたように、京都に留学した際は「車椅子の人も歓迎されているんだ」と感じ、日本社会の「平等」や「愛」に心を打たれました。今度の訪問により、その感動の気持ちが強くなりました。この一週間に出会った方々は皆さん、祖母のことを気にかけてくれて、思いやりの心を感じました。特に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を表敬訪問した時、体が不自由なスタッフの方が最新型の車椅子について丁寧に説明してくれて、ご自身の体験談も語ってくれて、心からのおもてなしを受けた私は感謝の気持ちでいっぱいでした。皆さんのおかげで、2020年、東京オリンピックで祖母の願いは実現できると思います。祖母の心に出来た壁を打ち破ることができると信じています。

 表敬訪問させていただいた中で、ある先生の一言が心に響きました。「日中友好と言うだけなら誰にでもできる。言葉だけでは何の役にも立たない、言葉よりも行動」。その話に私は深い感銘を受けました。そこで、私は以下の二つのことが重要ではないか考えました。

 一つ目は、相手国に行って、その国を客観的に把握すること。
私は、日中交流においてメディアの果たす役割は大きいと感じました。なぜかというと、両国のほとんどの人は日常生活の中で相手国の人と関わる機会が少ないからです。メディアはもっと大きな視野で相手国を見て、自国の人々が知らなかった面について、もっと全面的、客観的に報道して欲しいです。また、この情報化社会では、個人メディアも大きな役割を持つと思います。例えば、個人が拡散する画像や動画を通じて日本の一般人も中国人の生活を目にする機会が増えれば、徐々に中国を身近に感じられるようになるのではないでしょうか。日本のコンビニで温かいお茶と冷たい牛乳を買ったら、別々の袋に分けて入れてくれたんです。デパートでは雨の日に、買ったものが雨に濡れないようにわざわざビニール袋をかけてくれました。外国人としての立場から見た、このような日本の魅力を、みんなに伝えたいです。今度、NHKのラジオ番組では生出演の機会も得て、私は作文だけではなく、生の声で自分が見た・聞いた・感じた日本を、自ら世界中の皆さんに発信できたことで、「日中友好に貢献できる人になりたい」という目標に一歩近づけたのではないかと思います。

 二つ目は、相手国とのご縁を大事にすること。
 そもそも私と日本の最初の出会いは物心がついた時からでした。南宋時代の都だった杭州には中国と日本の繋がりが数多くあります。そのご縁もあって、杭州生まれ杭州育ちとして地元の文化を味わいながら、日本文化や日本文学の魅力にも惹きつけられるようになりました。今回の訪問で、日本人の中にも杭州に詳しい、杭州に高い関心を持っている方が多いと感じました。地元の霊隠寺に空海の銅像があるということを先生方に紹介させていただくと、皆さんは喜んでくれました。鈴木外務大臣政務官から「実は最初に訪れた中国は杭州でした。龍井茶をきっかけに、杭州を旅行し、いい思い出になりました」というお話を伺い、龍井茶を始め、地元の文化が大好きな私はすごく嬉しかったです。お茶が繋ぐ中国と日本、不思議なご縁を感じます。これからもお互いの国の文化を伝えていきたいと思います。

 多くの交流の橋がかかっていくには、言葉だけでの交流でなく、心の交流が不可欠だと思います。一週間は短くても、様々な方と出会えたことは一つのご縁であると信じています。これからも日本とのご縁を大切にしたいです。
 この一週間で得た貴重な経験を大切にして、若者として日中友好に新たな一歩を踏み出していきたいと思います。 (了)

2019.03.13

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