表彰式・日本語スピーチ大会、北京の日本大使館で開催
「車椅子で、東京オリンピックに行く!」――最優秀賞の黄安琪さんら学習の成果を披露
 
 【日本僑報社発】日本僑報社・日中交流研究所主催の第14回「中国人の日本語作文コンクール」の表彰式と日本語スピーチ大会が2018年12月12日(水)午後、北京の在中国日本大使館で、横井裕大使をはじめ上位入賞者やその指導教師、家族ら関係者約160人が出席して開かれた。
 日中平和友好条約締結40周年の節目の年である今年、本コンクールはその認定事業の一環として開催された。

 (表彰式共催:日本大使館、コンクール協賛:株式会社ドンキホーテホールディングス、公益財団法人東芝国際交流財団、メディアパートナー:株式会社朝日新聞社)

 来賓として、横井大使をはじめ日本大使館の堤尚広公使・広報文化部長、ドンキホーテホールディングスの橋光夫専務取締役兼CFO、株式会社東芝の須毛原勲中国総代表(東芝中国社董事長兼総裁)、朝日新聞社の西村大輔中国総局長、中国日本商会の岩永正嗣副会長(日中経済協会北京事務所所長)などが出席した。

 中国人の日本語作文コンクールは、日本と中国の相互理解と文化交流の促進をめざして、2005年にスタート。中国で日本語を学ぶ、日本に半年以上の留学経験のない学生を対象として、今年で第14回を迎えた。今回は中国各地の大学や専門学校など235校から、計4288本もの多くの作品が寄せられた。
 日本と中国は今年、平和友好条約40周年の記念の年を迎え、両国首脳の相互訪問が実現するなど関係改善への動きをいっそう加速させている。こうした前向きな両国関係の背景をとらえ、中国で日本語を学ぶ若者たちの日本語学習熱や日本への関心が依然として高まりを見せていることが示された形となった。
 
 今回のテーマは(1)中国の若者が見つけた日本の新しい魅力 (2)日本の「中国語の日」に私ができること (3)心に残る、先生のあの言葉──の3つ。

 数次にわたる厳正な審査の結果、佳作賞以上の計302本(人)が入選を果たし、現任の横井裕大使自らによる審査で、最優秀賞の日本大使賞が決定。復旦大学日本語文学学部4年(作文執筆時は同3年)の黄安琪(こう・あんき)さんによる「車椅子で、東京オリンピックに行く!」がみごと日本大使賞の栄冠に輝いた。

 この作品は、京都での短期交流プログラムに参加した黄安琪さんが、日本の進んだバリアフリー文化に接し、元体育教師で現在は車椅子で生活する祖母の「オリンピックを見に行きたい」というかねてからの夢を東京五輪でかなえてあげたいという、心優しく、かつ強い思いが感じられる感動的な作品。東京五輪を目標にしている点も、日中未来志向の1つの形として好感が持てたという評価が多かった。

 表彰式で挨拶した横井大使は、この作品を自ら大使賞に選んだ理由について「黄さんの作品では、オリンピック・パラリンピックというタイムリーな題材が取り上げられている。それに加えて、お年寄り、親族、そして障害を持った人々を思いやる優しさが、黄さん自身の日中両国での経験を踏まえて大変丁寧に表現されている」と語り、時宜を得た題材と思いやりの気持ちが丁寧に表現されていたことが大使賞選出の大きなキッカケとなったことを明らかにした。
 また「そのほかの作品も素晴らしいものばかり」だったとした上で、今回は入賞者の多くが日本を訪れており、「短期間の交流の中でも日本に対する見方が大きく変わり、深まったことがどの作品にも良く表れている。その好奇心、行動力、感受性の高さに大いに敬服する」などと強調。
 日本政府としては、より多くの中国の人々にありのままの日本の姿を知ってもらうため「来年1月1日から、中国の大学生や訪日リピーターに対する一層のビザ緩和を実施する予定だ。この新たな措置によって日中両国の国民交流が更に拡大することを期待している」として来年から訪日ビザが一部緩和されることが明らかにされた。
 さらに日本語を学ぶ中国の学生たちに向けて「引き続き日本語を始めとする各分野で研鑽を積み、未来の日中関係の担い手、両国の間の架け橋となっていただけるものと、確信している」と力強いエールを送った。  横井裕大使のご挨拶(全文)はこちら

 
  日本大使賞の授与式では、横井大使が宋妍さんに賞状を授与したほか、日中交流研究所の段躍中所長(日本僑報社編集長)が副賞の「日本1週間招待」について発表した。
 続いて上位入賞の1等賞(5人)、2等賞(15人)、3等賞(60人)受賞者がそれぞれ発表され、この日のために中国各地から駆けつけた受賞者たちに賞状と賞品が授与された。メディアパートナーの朝日新聞社からは、2等賞以上の受賞者に対し「これで日本語の学習に一層励んでほしい」と朝日新聞が半年から1年間、無料で閲覧できる「朝日新聞デジタルID」がプレゼントされた。
 受賞者代表のスピーチでは、日本大使賞受賞の黄安琪さんをはじめ、1等賞受賞の邰華静さん(青島大学、現在は天津外国語大学大学院に在学中)、王美娜(おう・びな)さん(中南財経政法大学、6月に卒業)、劉玲(りゅう・れい)さん(華東師範大学)、呉曼霞(ご・まんか)さん(広東外語外貿大学南国商学院)の5人が登壇。
 日本の進んだバリアフリー化は「『平等』や『愛』を伝えるメッセージであるだけでなく、不幸な人の心を癒し、幸せにする『薬』なのだ」と訴えた黄安琪さんのほか、旅行先の東京でなくした財布を民泊の大家さんが親身になって探してくれ、「(日本には)困った時、助けてくれる優しい人がたくさんいる」と声を詰まらせながら感動的な体験を述べた王美娜さんなど、それぞれが受賞作を堂々とした日本語で発表。さらに一人ひとりが受賞の喜びや感謝の気持ちを堂々と発表するなど、日ごろの学習の成果を存分に発揮した。

 来賓の挨拶に続いて、日中交流研究所の段躍中所長が本コンクールの開催について、壇上のスクリーンに図表などを映し出しながら報告。
 コンクールは、この14年間で中国全土の300を超える大学や大学院、専門学校などからのべ4万1490本(人)の応募があり、うち受賞者(佳作賞以上)はのべ2115人を数える。こうした実績により、コンクールはいまや中国で日本語を学ぶ中国人学生にとって「参加すること自体が大きな目標になる」ほどの知名度と権威性の高い大会へと成長を遂げてきた。
 さらに、コンクールの入選作品をまとめた「受賞作品集」をこれまでに14巻刊行(いずれも日本僑報社刊)。合わせて912本に上る上位入賞作品を掲載し、日中両国のメディアに多数報道されているほか、「中国の若者の声」として各界から注目されていることなどが紹介された。


 

 段躍中所長は14年にわたる各界からの支援に感謝の意を述べるとともに、「日本語学習を通じて日本への理解を深めた学生たちを、これからも応援していただきたい」と、コンクールへの一層の理解と支援を呼びかけた。
 続いて、来年の第15回コンクールのテーマが発表された。東京オリンピック・パラリンピックが翌年に迫る2019年は、これに関するものとして(1)「東京2020大会に、かなえたい私の夢!」をはじめ、(2)「日中新時代を考える──中国の若者からの提言」 (3)「今こそ伝えよう!先生、家族、友だちのこと」の3つのテーマが挙げられた。
 応募期間は2019年5月15日(水)から5月31日(金)。段所長から「引き続き、多くの学生に応募していただきたい。今から準備してください!」などと熱心な呼びかけがあった。


 表彰式第1部の「学生の部」に続く第2部は「先生の部──日本語教師フォーラムin 中国」として、2015年に創設された「優秀指導教師賞」の受賞者が発表された。
 「優秀指導教師賞」は、コンクール3等賞以上の受賞者を育てた教師に対して、その日ごろの努力と成果をたたえるもの。受賞者それぞれに同賞が授与された。
 続いて「優秀指導教師賞」受賞者を代表して1等賞以上の受賞者を育てた教師のうち、復旦大学の丹波江里佳先生、丹波秀夫先生、青島大学の張科蕾先生、中南財経政法大学の中村紀子先生、華東師範大学の島田友絵先生、広東外語外貿大学南国商学院の木村あずさ先生の6人が登壇。
 作文を書く場合、まずは読者の存在を念頭に置き、その上で「読者が興味や共感を持てる内容で、物事をよく観察し、世界に1つだけの作品を書こう」(丹波江里佳先生)、「決まった型の作文ではなく、自分の考えを整理して素直な考えを伝えよう」(島田先生)などの「作文の書き方指導」についての報告があったほか、「日本語で作文を書くことは大変だが、その大変さを乗り越えれば、コンクール受賞で人生が大きく変わることがある。学生の皆さんはどうかチャレンジを続けてほしい」(中村先生)といった励ましの言葉があった。

 この後、受賞者と来賓、主催者らが全員そろっての記念撮影が行われた。
 受賞者たちは、晴れやかな笑顔を見せるとともに「受賞して本当にうれしい。来年はもっと上位を目指します!」「受賞者代表の素晴らしいスピーチを聞き、感動した。学習に対するいい刺激を受けました」などと語り、さらなる日本語能力アップへの強い意欲を示していた。




※ 表彰式の模様は、メディアパートナーの朝日新聞をはじめ、共同通信、日本テレビ、中国の各メディアなどにより多数報道されました。
 メディア報道
 




日テレNews 2018.12.12
朝日新聞 DIGITAL 2018.12.18
 
 
 

 
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