一対一のご指導を受けながら 翻訳のテクニックを日頃の練習から学べる --日中翻訳学院・高橋塾で学んだこと 朱雅蘭(第11期生) 「日本語の訳文を読みやすく仕上げるために、どのような工夫をすればいいでしょうか」 それは、翻訳に関心を持っている人々が常に考えている問いだと思います。 しかし、自分の訳文の問題点はどこにあるのか、どのような訳文が読みやすいと言えるだろうか、また何かコツはないのか、というように、よりよい訳文を目指したいですが、どうすればいいかわからない人は少なくないでしょう。 高橋塾の情報を見かけたのは、そういう悩みを抱えている時期でした。 「中国語を「コッテリ中華」、日本語を「アッサリ和食」にたとえられる理由が、翻訳テクニックの8項目にある」 その一文が引っかかった私は早速、高橋先生のご著書『中日対照言語学概論』を拝読しました。言語学の視点から中国語と日本語の構文・連語・単語の各レベルにおける関係などについて、様々な例文と並べて詳しい解説が書かれていました。機械のような訳文を避けるために、「中日両言語を分かりやすくする実質視点と話題視点による表現上の違い」を意識しながら訳すことが大事だと考えさせられ、大変勉強になりました。 更に高橋塾の主催である日本僑報社・日中翻訳学院の『日中中日 翻訳必携シリーズ』が、翻訳を学ぶのに必要不可欠な本だと言われています。中国の日本語学科の学生や中文日訳に関心を持っている方々の間では大人気のため、ぜひ高橋先生よりご指導をお受けしたいと思いました。 去年の11月から約3か月、高橋塾で勉強させていただき、一人で黙々と悩むより、先生から訳し方のヒントをいただけるので、凝りに凝った訳文を考えることが好きになりました。 ここから、日本語を母語としない外国人の目線から、「高橋塾」に参加できてよかったと思うところを2点、まとめたいと思います。 ■一対一のご指導を受けながら、翻訳のテクニックを日頃の練習から学べる 翻訳の基礎を持っていない私は、第11期から参加させていただきました。週1回、課題文(中国語の文章2編を10回に分ける)を提出し、その後、先生から訳文へのコメント、解説と添削をいただきます。 単に「ここが間違っているよ、こうすればいいですよ」という翻訳テクニックを紹介したり、訳文の正解を示したりするのではなく、高橋先生は、塾生一人一人の訳文に合わせて、それぞれの問題点を突き止め、翻訳のコツを解説していました。今まで気づかなかった問題も、よりよい訳文を目指す方法も教えていただき、大変勉強になりました。 そして、読みやすい訳文になるためのコツについても色々と学ばせていただきました。中でも、先生からのご助言を3点、取り上げたいと思います。 今期の高橋塾で得た「翻訳の心得」 @推敲を重ねること A声を出して訳文を読んでみること B日本語のオノマトペを活用すること とくに日本語を母語としない外国人は、日本語の的確さという問題にも直面していると思います。そのため、単語と専門用語をたくさん調べたり、訳文を何度も推敲したり、色々と工夫しなければならないと思います。私は毎回、課題文に取り組むとき、青字で調べた単語を示し、波線で難しいと思った箇所を表記しています。それを読んだ高橋先生は、波線で引かれた箇所の一個一個に丁寧なコメントをくださり、理由も書いてくださったので、とてもありがたいです。 ■塾生同士の交流の場で振り返る 通信制のため、コロナ禍で渡日の目途が経っていない今、海外にいても受講できるのが非常に助かりました。 今期の塾が終わったあと、日中翻訳フォーラムと合わせ、第11期のスクーリングも開催されました。高橋先生が中日両言語の重複表現をテーマとした基調講演をなされ、その後も翻訳の方法に関する質問にも丁寧に答えていただきました。更に翻訳デビューをなされた先生方から独自の翻訳のコツと翻訳の体験談について述べられ、翻訳者を目指そうとした高校時代の夢を再び蘇らせ、非常に素晴らしい勉強会になったと思います。 スクーリングで得た、翻訳するときに大事なことを3点ほどまとめてみます。 ・同じ分野の本を少なくとも3冊読むこと ・徹底的に調べること(適切な専門用語、定訳があればそれを使うこと) ・音読などで通じる日本語に整えること 高橋先生から頂いたコメントの中では、声に出して訳文を読むという方法を取り上げられていました。翻訳するときには気づきにくいですが、いざ声に出して読んでみると、「ここがちょっと変だね」と思ったところもたくさんあるので、よりよい訳文を目指すために非常に役に立ったと思います。 中国の翻訳理論では、「信(訳文が原文を)、達(訳文の読みやすさ)、雅(訳文の美しさ)」という言葉があります。それを意識しながら翻訳することが大変難しいと思いますが、今期の高橋塾を経て、翻訳ということ、そしてよりよい訳文を目指すために大切なことなど、改めて色々と考えさせられました。よりよい訳文を目指すには、やはり推敲を怠らないこと、そして練習を繰り返すことが大切だと思います。その分、高橋塾での勉強は大変よい刺激を与えてくれました。 まもなく次期も開催されるそうですが、前回の訳文の問題点と翻訳のポイントをまとめながら、引き続き、高橋先生のもとで翻訳力を磨き、一人前の翻訳家を目指していきたいと考えております。 謹んでこの文をもって、日中翻訳学院とご指導を頂いた高橋先生、そして塾生のみなさんに感謝の意を申し上げます。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※日中翻訳学院の公式サイトhttp://fanyi.duan.jp/ |