朝日新聞の古谷論説委員が 「中国建国70周年と日中関係」について講演 滔天会主催 講演する古谷氏。段躍中撮影 【日本僑報社発】アジア解放という大志を抱き、中国の辛亥革命(1911年)を支えた日本の革命家、宮崎滔天(1871−1922年)の意志を汲む、民間の日中交流の集まり「滔天会」の文化講演会が3月30日(土)午後、東京・西池袋のとしま産業振興プラザ(IKE・Biz)で開催された。 中国建国70周年の節目の年にあたる今年、同講演会では、朝日新聞の中国特派員、初代瀋陽支局長、中国総局長などを歴任した古谷浩一論説委員を迎え「中国建国70周年と日中関係」についてベテランのジャーナリストならではの鋭い視点で語ってもらった。 講演の中で古谷氏はまず、自身と中国のかかわりについて紹介。父親が中国で日本語教師をしていた縁で、1980年代に10代の若さで2度中国を訪れたことが、中国とかかわるようになる始まりだったという。 「自分にとって初めての海外だった中国は、ちょうど文革(文化大革命)の暗い時代から抜け出た開放感にあふれていた。当時は日中国交正常化(1972年)から間もないころで、約8割の日本人が中国に好感を持っていた」と古谷氏は当時を振り返る。 その後、中国総局長として赴任した2018年1月までの4年半は、領土問題をめぐり日中関係が一気に冷え込んだ時期と重なり、「記者として仕事がやりづらい、とても厳しい時期だった」と仕事の上での苦労を明かした。 そうした貴重な経験をふまえた上で、日中関係については、関係を決定づける「4つの要因」として「国内政治」「対外関係とりわけ対米関係」「経済」「国民感情」の4つを提示。その中で、2国間関係の中でも日中間で独特なのが「国民感情」であると強調した。 具体的には「現在、両国の相手国に対する好感度は非対称的で、4割の中国人が日本に対して好意的である一方、日本人は8割が中国に対してネガティブな印象を抱いている」とした上で、日本側の国民感情が作られていく要因として「歴史問題、領土問題、または知的財産権などの問題における対立が、中国に対する負の感情を形成している」と指摘。こうしたマイナスの感情をプラスに変えていくためには「感情を乗り越えるストーリーが必要であり、具体的には様々な領域における(前向きな)戦略の一致、そして双方の自制が求められる」などと日中関係のさらなる改善のための持論を明らかにした。 古谷氏の講演に続いて、日本僑報社主催「中国人の日本語作文コンクール」の受賞者で現在は一橋大学院生として留学している朱杭珈さんが登壇した。 講演する朱杭珈さん。段躍中撮影 アニメ「ちびまる子ちゃん」が日本との出合いのきっかけだったと語る朱さんは、ポップなスライドを表しながら、自身の日本とのかかわりや日中両国の文化比較について紹介。その上で「ともに人格を重んじる東洋思想の伝統を受け継いでいる中日両国民は、やはり相互協力を推し進めなければならない。両国関係を料理にたとえれば、日中国交正常化から今年47周年を迎えるにあたり、さらに新しい日中友好のレシピを考えていく必要がある」などと呼びかけた。 (参加者の寄稿を編集) ●講師略歴 古谷浩一(ふるや・こういち)氏 1966年 神奈川県生まれ、上智大学理工学部卒。 1990年 朝日新聞社入社。前橋支局、大阪本社社会部を経て中国・南京大学、韓国・延世大学で研修。上海支局、中国総局、東京本社経済部、瀋陽支局長などを経て、中国総局員、朝日新聞東京本社国際報道部次長を歴任。 2013年9月から2018年1月まで中国総局長。 2018年4月から国際社説担当の論説委員。 ■中国人の日本語作文コンクールの総合案内 |