1.大学について
本大学は中国大学の基準からみると、2Bランクの公立大学ということになっている。理工学院の名の通り、理工系の学部の学生が多く(総計2万人規模)、外語系は英語4クラス、日本語1クラスとなっている。(日本語学科は、2011年新規創設、当該クラスは2期生にあたる)
2.本大学の作文授業について
作文の授業は、2年次(9月〜6月)、計14回(週1回90分)となっている。
3.対象クラスについて
2014年授業時:2年生・23名(男5名) 毎週月曜日 午後2時30分〜4時10分
学生は、基本的には真面目に授業に取り組み、宿題なども確実に提出する
4.指導目標
原稿用紙の書き方、表記上の注意等から始まり、約1000字程度の文章作成までを主な目標と設定した。また、初期の段階から学生同士が文章を読むことを重視し、後半では学生相互に誤文修正や、文章構成について討論できるようにした。
5.教師の取り組み
「授業は失敗の場である」、学生の発言の間違い、ミスは褒めるべき対象であると考えている。その反面、「わかりません」「知りません」という回答は厳禁している。そのため教師の質問に留意している。
誤文ばかりでなく、美しい日本語表現をした作文を紹介する。
週1回、3人ずつのグループで朝始業前に30分の自由会話を教師と行い、普段の学生の様子 や考えなどを把握。そのため、授業において誤文の例を出す際、実名を出しても抵抗感がなくできた。
6.授業について
(1)初回授業
@星新一「ゲム星人」の途中までを印刷し、読ませ続きを考えさせる
A原稿用紙の書き方の規則を指導
Bその場で、文を書かせる
(2)第1段階(第2回〜) 文字数400
★目標
@原稿用紙の書き方が正しく理解できる。
A正しい助詞の使い方を理解、応用できる。
B単文から複文への挑戦。
C既習文法事項(慣用句、諺)を使い、楽しく表現できるようになる。
★授業内容
@月曜日授業の際、テーマを提示…(資料1) ⇒ 木曜日(読解授業の際)提出
A週末にかけ、教師が添削、感想を書き、PPTにて、誤文例を作成…(資料2)
B月曜日に、誤文例を元に、学生に正しい表現を考えさせる。(@に戻る)…(資料2)
C清書した作文の裏面に、他の人の感想を書いてもらう。(5人以上)、清書は再提出。
(3)第2段階(第9回〜) 文字数900〜
★目標
@他の学生の文章を読み、構成についてアドバイスできる。
Aよりよい表現方法を獲得できる。
★授業内容
@WORDにて作成させ、印刷後、次回の授業に持参
A授業時、4〜5人のグループを作り、話し合いをさせる。
内容は、主に、文章の構成について。⇒教師による添削
B清書をし、感想を裏面に書かせる。
(4)第3段階(第12回〜)
★目標
@他の学生の、文章の構成、および日本語の誤文修正ができる。
授業内容
@授業時
4人グループを作り、下記について話し合い
1)助詞、文法、不適格な表現方法などを直す
⇒ 30分経過後、教師が全員の文を読んで回る。
(感想と、学生が気づかない点を指摘)
2)もっと、面白い文章にするにはどうしたらいいか、アドバイスをさせる
A翌週までの宿題
修正したものを、WORDにて教師に送る
B翌週、誤文修正
7.反省と課題
わずか14回の授業で、文章能力を飛躍的に向上させることは無理ではあるが、文章を作り、自ら推敲することの重要さは理解させられたのではないかと考える。ともすれば単調な作文授業であるが、毎回学生が意欲的に活動してくれたことには満足している。作文の授業は本来、初級・中級・高級日本語の授業の中で継続的に行われることが望ましいが、中国人教師の場合誤文の修正が難しい場合が多いため、消極的になりがちである。
今後は、他の中国人教師も巻き込んだ形で、作文指導を実践していきたいと思う。
8.資料
(1)作文テーマ(次回宿題用)
第1回;ゲム星人
第2回;臨死
第3回;大人になった瞬間
第5回;あなたは、運を信じますか
第6回;自殺について
『わたしの意見』
第7回;一枚の写真から、ひとつの体験を表現する
第8回;「あなたは先生です。成績が上がらない生徒にどのような指導をしますか。」
字数900〜1100字
第9回;私の小さな冒険
第10回; 中国では、両親が男の子を欲しがることの是非について
第11回;あなたは、両親を老人ホームにいれますか?
@親の希望
A実態(中国の高齢化、自宅で死ぬのと施設で死ぬ実際の人数)
B自宅介護の問題点
第12回;「わたしだけが知っている ○○さんの面白い話」
第13回;「自分の欠点を笑い話にしよう」
(2)誤文例(典型的な例)
1.ゲム星人は、その問題の解決方法を出てくれる。
自動詞、他動詞の違いの明確化
2.地球と違う星球
中国語の単語をそのまま使用してしまう
3.あなたをスパイと言ってあげて、本当にすみませんでした。
〜てあげる、〜てもらう、の意味と使い方
4.私はほしい未来が、全部自分の手で叶える。
複文構造の理解と助詞の使い方
5.ある日、父は泣いて、私はどうするか全然分からないといった。
泣くという言葉のさまざまな表現方法について(目を潤ませる、涙が滲むなど)
6.よく働くと、お金を稼いでいい生活ができる
〜と、〜ば、〜たら等の使い方の違い
7.実は私は自殺したことがある。中国では自殺した老人は多い。愛している家族
動詞の活用形の意味の違い
8.あそこには、化物があるよ。
ある、いる、の語感