開催報告と謝辞
日本僑報社・日中交流研究所 所長 段 躍中



■概要■
主催:
日本僑報社・日中交流研究所
協賛:
株式会社ドンキホーテホールディングス、公益財団法人東芝国際交流財団
メディアパートナー:  朝日新聞社
後援:
在中国日本国大使館、(公財)日中友好会館、(一財)日中文化交流協会、日中友好議員連盟、(公社)日中友好協会、
(一社)日中協会、日本国際貿易促進協会、(一財)日中経済協会、中国日本商会、北京日本倶楽部、日本日中関係学会、
(一社)アジア調査会
協力:
日中文化交流センター、(公財)日中国際教育交流協会
   
*第13回中国人の日本語作文コンクールは、外務省による2017年日中国交正常化45周年の「周年事業」として認定されました。

 
■審査の経過■
【第一次審査】
  第一次審査は、日本僑報社・日中交流研究所の「中国人の日本語作文コンクール」事務局を中心に、ご協力いただける日本語教師(前任者を含む)などの関係者にも依頼して進めました(在中国の現任教師の場合、勤務校からの応募作品の審査は外させていただきました)。
審査の前に、募集要項の規定文字数に満たない、あるいは超過している作品を審査対象外とした上で、各規定をクリアした作品について採点しました。
今回の一次審査の審査員として、主に下記の方々がご協力くださいました。
岩楯嘉之、小林さゆり、佐藤則次、瀬口誠の各氏です(50音順)。今回の約4千本からなる作品全てに目を通し、内容の面白さ(独自性)、文法の正確さなどにより採点し選考しました。一次審査は、本コンクール審査の根幹となるもので、最も時間と労力を要する部分でもあります。ご支援とご協力を賜り、誠にありがとうございました。
 
【第二次審査】
  第二次審査は、公正を期するために応募者の氏名と大学名を伏せ、受付番号のみがついた対象作文(上位21作品)を審査員に採点していただく形で実施しました。
  今回は、下記の審査員13名が二次審査にご協力くださいました(50音順・敬称略)。この場をお借りして、深く感謝を申し上げます。
 
赤岡直人
岩楯嘉之
折原利男
関 史江
瀬野清水
高橋文行
谷川栄子
塚越 誠
藤村幸義
二井康雄
古谷浩一
吉田弘之
和田 宏
(公財)日中国際教育交流協会 業務執行理事
前NPO法人日中交流支援機構 事務局長
元埼玉県立高校教員、日中友好8・15の会会員
技術アドバイザー
元重慶総領事
日本経済大学大学院教授
(株)ウィルナショナルファーストアカデミー 代表取締役 代表
書家、日中文化交流の会 日本代表
拓殖大学名誉教授
映画ジャーナリスト、書き文字作家
朝日新聞中国総局長
アジア調査会事務局長
NHKグローバルメディアサービス専門委員、神奈川県日中友好協会会員
【第三次審査】
 第三次審査は、二次審査で得点の高かった学生に対し、スマートフォンの音声アプリでそれぞれ直接通話をし、口述審査を行いました(審査員・佐藤則次氏、段躍中)。その上で、新たに日本語による短い感想文を即日提出してもらい、審査基準に加えました。
 
【最終審査】
  最終審査は、二次審査と三次審査の合計点により選出した最優秀候補者と一等賞候補者計6名の作品を北京の日本大使館あてに送付し、現任の横井裕大使ご自身による審査で最優秀賞「日本大使賞」を決定していただきました。

 
■各賞について■
  審査員による厳正な審査の結果、今回の応募総数4031本の中から、計292本の作者に対して各賞を授与しました。内訳は、最優秀・日本大使賞1名、一等賞5名、二等賞15名、三等賞60名、佳作賞211名です。
本コンクールは近年とくに応募者数(作品数)が増加しており(2014年以降、毎年のべ4千~5千名に上る)、主催者はこれを考慮し、前回の第12回コンクールから三等賞枠をそれまでより10名増やした60名(本)に、また佳作賞枠も200名以上にそれぞれ拡大しています。
 
■園丁賞について■
  学生たちの日本語能力の向上は、担当教師の指導なくしてはありえません。そのため主催者は、日中国交正常化35周年にあたる2007年の第3回コンクールから、学生の作文指導に実績のある学校及び日本語教師を表彰する「園丁賞」(第3回の「園丁奨」より改称)を創設しました。「園丁」とは中国語で教師のことを意味しています。
対象となるのは、応募校1校につき団体応募数が50本を超えた学校です。当該校には賞状を授与しました。また、各校で日本語書籍が不足しているという実情を聞き、その一助になればとの思いから、100本以上の応募があった学校に10万円以上相当、50本以上の応募があった学校に5万円相当の書籍をそれぞれ寄贈いたしました。また応募数が10本を超えた学校にも、記念書籍を寄贈しました。
日本語を学ぶ学生たちに十分に活用していただければ幸いです。
 
  今回の園丁賞受賞校は、計36校となりました。受賞校と応募数は次の通り。受賞校の皆さん、誠におめでとうございます。
湖州師範学院(152)、大連海洋大学(119)、中南財経政法大学(104)、大連理工大学城市学院(103)、浙江万里学院(98)、武漢理工大学(96)、西南交通大学(95)、淮陰師範学院(85)、吉林華橋外国語学院(84)、天津工業大学(79)、東華大学(79)、浙江師範大学(72)、青島農業大学(71)、湖南大学(70)、大連工業大学(68)、魯東大学(66)、華僑大学(64)、青島大学(64)、天津科技大学(63)、華東政法大学(62)、山西大学(62)、江西外語外貿職業学院(60)、嘉興学院(58)、揚州大学(57)、大連東軟情報学院(56)、大連外国語大学(55)、東華理工大学(54)、海南師範大学(53)、中国海洋大学(51)、寧波工程学院(51)、嶺南師範学院(51)、塩城工学院(50)、菏澤学院(50)、恵州学院(50)、福建師範大学(50)、泰山学院(50)。
 
■優秀指導教師賞について■
  従来のコンクールでは、学生を対象とした各賞の授与のほか、団体応募の作文本数が50本を超えた学校に対し、前述の「園丁賞」を授与してきました。2015年の第11回コンクールでは、これらの賞のほかに優れた指導教師個人をたたえる「優秀指導教師賞」と「指導教師努力賞」をそれぞれ創設、2016年の第12回コンクールでは「優秀指導教師賞」の授与を継続実施いたしました。
これは中国で日本語を学ぶ学生たちに、日本語や日本の文化を熱心に教えている中国人教師、ならびに日本人教師の日ごろの努力とその成果をたたえるものです。
本コンクールでは、前回同様「優秀指導教師賞」の授与を行うこととなりました。対象となるのは、三等賞以上の受賞者を育てた日本語教師で、受賞者には賞状と記念品が授与されます。
 
  今回の優秀指導教師賞の受賞者は、のべ計107名です。受賞者と学校名は次の通り(順不同、敬称略)。教師の皆様、誠におめでとうございます。
高良和麻(河北工業大学)、賈臨宇(浙江工商大学)、中村紀子、森田拓馬(中南財経政法大学)、張科蕾、小川郁夫(青島大学)、郭麗(上海理工大学)、邢雅怡、濱田亮輔(東北大学秦皇島分校)。范碧琳(青島大学)、石原美和(南京農業大学)、佐藤敦信、曹春燕(青島農業大学)、池嶋多津江(同済大学)、大工原勇人(中国人民大学)、駒澤千鶴(国際関係学院)、李敏、後藤那奈(天津科技大学)、太田敦雄(大連東軟信息学院)、半場憲二(武昌理工学院)、若菜郁夫(ハルビン工業大学)、山口文明(江西財経大学)、坪井弘文、杜小平(青島職業技術学院)、小川友里(華僑大学)、河崎みゆき(上海交通大学)。杜雪麗(青島大学)、南和見、田苗(杭州師範大学)、日下部龍太(清華大学)、平塚貴嗣、馮立華(長春師範大学)、李楽(恵州学院)、上田裕(電子科技大学)、稲木徹(華僑大学)、鈴木穂高(浙江農林大学)、朴京玉(青島農業大学)、徐秋平、藤崎郁美(西南民族大学)、田中弘美(菏澤学院)、史艶玲(河北大学)、陳霞(上海市晋元高級中学)、岩佐和美(東華大学)、馬光超(寧波外国語学校)、周暁氷、安田悠(許昌学院)、森下朱理(大連海事大学)、新村美有紀(山東財経大学)、西端大輔(上海海洋大学)、丹波秀夫(上海杉達学院)、高月舞(中南民族大学)、夏芸、照屋慶子(湖南大学)、小林清史(広東外語外貿大学)、森健一郎(信陽師範学院)、楊海茹、平岡正史(嘉興学院)、鄒茜、神田英敬(武漢理工大学)、原田拓郎(広東海洋大学)、孫薇(天津工業大学)、森岡ゆかり(大連東軟信息学院)、王菲、羅鵬(西南交通大学)、劉艶絨、千葉雄一郎(東華理工大学)、李夢瑜、森本卓也(江西農業大学南昌商学院)、李艶秋(海南師範大学)、富松哲博、趙徳旺(淮陰師範学院)、土肥誠(東莞理工学院)、張晨曦(大連大学)、不破明日香(寧波工程学院)、単麗(大連工業大学)、雨宮雄一(吉林華橋外国語学院)、駒﨑達也(華東政法大学)、横井香織、石田雄士(中国海洋大学)、川内浩一(大連外国語大学)、古田島和美(常州大学)、堀川英嗣(山西大学)、瀬口誠(運城学院)、彭美娟(楽山師範学院)、山田ゆき枝(南京信息工程大学)、原口耕一郎(安徽大学)。

※三等賞以上の受賞者が複数名に上り、複数受賞された先生方の場合、「優秀指導教師賞」を各人1賞とさせていただきます。なにとぞご了承ください。
 
■本書の刊行経過■
  日中交流研究所の母体である日本僑報社は、第1回の作文コンクールから受賞作品集を刊行しており、本書で13作目となります。
 タイトルは順に、第1回『日中友好への提言2005』、第2回『壁を取り除きたい』、第3回『国という枠を越えて』、第4回『私の知っている日本人』、第5回『中国への日本人の貢献』、第6回『メイドインジャパンと中国人の生活』、第7回『蘇る日本!  今こそ示す日本の底力』、第8回『中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?』、第9回『中国人の心を動かした「日本力」』、第10回『「御宅」と呼ばれても』、第11回『なんでそうなるの?  中国の若者は日本のココが理解できない』、第12回『訪日中国人 「爆買い」以外にできること』。
 これら12作の作品集は多くの方々からご好評を賜り、朝日新聞の書評欄や日経新聞一面コラム、NHKなどで紹介されたほか、各地の図書館、研究室にも収蔵されております。

 今回のテーマは(1)「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」 (2)「中国の『日本語の日』に私ができること」  (3)「忘れられない日本語教師の教え」の3つとしました。
 (1)の「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」は、今回の作文コンクールのメインテーマといえるものであり、本書のメインタイトルとしても使用しました。このテーマでは、2017年の日中国交正常化45周年を記念して、新世代の若い学生さんたちから、そのフレッシュな視点・観点で「中国の新しい魅力」について日本人に伝えてもらうことを目的としました。
 日本と中国は現在、関係改善に向けて両国が努力していくことで一致していますが、年々増加を続ける訪日中国人客に比べ、訪中日本人客が減少し、人的往来のアンバランスが生じているのが現状です。また、歴史ある「友好都市」など日中の地方同士の交流も、変化の大きな新しい時代を迎え、新たな関係構築を模索しているとの報告もあるようです。
 そこで、これまで日本人や他の外国人にあまり知られていない、それを知ったらどうしても訪れたくなるような中国の新しい魅力やセールスポイントなどについて自由に書き綴ってもらいました。その作文が、国交正常化45周年を大きく盛り上げ、友好都市関係の再活性化や訪中日本人客の増加等につながる一助となることを期待したものです。

 (1)をテーマとした応募作の中で多く見られたのが、この数年、中国人の生活を大きく変えたとされるスマホ決済やシェア自転車などの新しいサービスについての紹介でした。“イノベーション大国”“デジタル強国”を目指す中国のIT産業の発展は確かに目覚ましく、それに伴い人々の暮らしがいっそう豊かで便利になり、生活の質が向上したことは想像するに難くありません。こうした“IT先進国”としての中国の現状や変貌をつぶさに伝えた作品は、日本の読者の関心を大いに集めるものと見られます。
 中でも上位に選ばれた作品を見ると、そうした新サービスについて一辺倒で“紋切り型”の紹介に終わることなく、自らの体験を交えた具体的なエピソードを生き生きと伝えたことが高く評価されたようです。
 このほか対外的にあまり知られていない地方の珍しい風習や少数民族の暮らし、中国伝統文化の現状と変化などについて、実体験や自ら知り得たことを踏まえて、リアリティーのある描写で読み手を引きつけた作品もありました。それらはいまだ知られざる中国の一面であり、日本人読者の興味をそそり、中国理解促進の一助にもなることから高得点を得た作品が多かったようです。

 (2)の「中国の『日本語の日』に私ができること」は、2017年の日中国交正常化45周年を記念して、中国で初めての「日本語の日」を創設したいと考える主催者(日本僑報社・日中交流研究所)に対し、「この日、自分なら何ができるか」を具体的に提言してもらうという前向きな試みでした。
 主催者はそれをもって中国人学生の日本・日本人・日本語への理解をいっそう深めてほしい、中国各地の日本語学習者に、その語学力をいっそう楽しく伸ばしてほしいと願いました。
 このテーマでは、主催者の予想を超えるユニークな提言が数多く出されました。例えば「地元の観光スポットに、QRコード読み取り式の日本語説明看板を増やす」「中国人の川柳大会を開く」「多くの人と東日本大震災復興支援ソング『花は咲く』を歌い、日本人の心を癒す」などです。その独自性や旺盛な意欲からは、やはり若い世代ならではのみずみずしい感性と勢いがうかがえました。
 中にはアイデアが浮かびすぎたのか、1作品せいぜい1600字以内の短い作文の中にいくつもの案を列挙したため「伝えたいこと」がかえって不明瞭になってしまった作文もありました。しかしそれよりも「日本語説明看板」や「川柳大会」などのように「伝えたいこと」を1つか、せいぜい2つに絞り、具体的な方法を掘り下げて書いたほうが読者の心に響きやすく、かつ「伝える力」「メッセージ性」が強くなったように思われます。

 (3)の「忘れられない日本語教師の教え」は、第11回のテーマ「わたしの先生はすごい」、第12回のテーマ「私を変えた、日本語教師の教え」に続くものです。
 中国における日本語学習者は現在100万人を超えており、その100万人を指導する日本語教師の数は、約1万7千人(うち日本人教師が約2千人)に上るそうです。この教育現場で日々奮闘されている先生方の地道なご努力やご苦労はいかばかりかとお察しする次第です。
 そこで今回も、学生さんたちが日ごろ指導を受けている日本語教師から学んだこと、とくに自分の生活や学習態度、考え方などを大きく変えた先生の教えを具体的に書き綴ってもらいました。それをもって学生側から日本語教師に感謝の気持ちを示すとともに、先生方にはその作文を今後の指導の参考にしていただければと考えました。
 例年に違わず、数多くの優れた作品が集まりましたが、ここでは前回に引き続き「日本語教師の教え」をテーマに選び、連続して1等賞を受賞した張君恵さん(中南財経政法大学大学院)の作文について触れたいと思います。
 今回の張さんのタイトルは「走り続けるということ」。テーマは昨年同様の「日本語教師の教え」ですが、今回は今年の作文コンクールに2年連続してチャレンジした類まれな経験を描いた、よりタイムリーで興味深い内容となりました。当初は躊躇していたという作文コンクールへの“再チャレンジ”を強く後押ししてくれた教師と、それに応えた自身のひたむきな努力について率直に綴り、高い評価を受けました。
 本コンクールで2年連続しての1等賞受賞は初の快挙。張さんが、その人一倍のチャレンジ精神と努力でつかみとったこの成果は、本コンクールを目指す多くの後輩たちの新たな励みと目標になることでしょう。

 総じていえば今回の応募作品は、これまで以上に大差のない優れた作品が多く、各審査員の頭を悩ませました。
 審査を終えたある審査員は「いずれも甲乙つけがたく、点数をつけるのに本当に苦労しました。どの作文もわかりやすく正確に表現されていることから、文法点が高くなりました。この背景には、指導された日本語教師の質の高さと講義内容の工夫があると思われました」と講評を寄せてくださいました。
 また「昨年に比べると、テーマが広がったために面白い作文が増えましたね」という感想を述べた審査員のほか、「テーマ(2)は各自具体的かつ積極的な取り組みが出てきて、とても好感が持てました。ぜひ頑張っていただきたい。それがやがて日中の真の草の根交流の『種』となるのだと信じます」と今後への期待を述べた審査員もおられ、いずれも高い評価でした。

 また、第一次審査に多大なご協力をいただいた運城学院(中国山西省)の日本語教師、瀬口誠先生(現・湖南大学)からは特別寄稿「審査員のあとがき」を前回に続いてまとめていただき、本書に掲載いたしました(瀬口先生による勤務校からの応募作品の審査は外させていただきました)。
 瀬口先生は、第13回作文コンクールの3つのテーマと、各テーマが求める「本質」についてそれぞれ詳しく解説されています。自らの提案が採用された(1)のテーマ「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」の応募作については「審査員は、学生たちが紹介する中国の魅力に読みふけり、感心しながら、第一読者となって読ませていただいた」「厳正な審査を潜り抜け日の目を見た作文を読んだ読者の方々は、そこに、中国の悠久の歴史、広大な国土、多様な文物、新しさと懐かしさを発見することだろう」と論評しています。
 その一方で、「中国の新しい魅力」に「スマホ決済」などの新文明が多く取り上げられたことに対し「目先の物ならぬ、指先の物に捕らわれて書いていた」と鋭く指摘した上で、「出題者の意図はどこにあるのか?   テーマが求めているものは何か? そして日本人だけでなく世界の観光客が求めるものは何か?   これら『他者感覚』を身につけ、相手の意図を読み取ることが肝心なのである」と、作文をより「深く考えて」まとめることを勧めておられます。

 このほか第13回作文コンクールでは、1等賞以上の受賞学生を指導された先生方を中心に、それぞれ貴重な「日本語作文指導法」をお寄せいただき、本書に併せて掲載しました。これら教育現場の第一線におられる先生方の指導法や講評は、現場を知りつくしたベテラン教師による真の「体験談」であり、作文コンクールで優秀な成績を収めるための「アドバイス」であり、さらにはより優れた日本語作文を書くための秘訣を満載した「作文ガイド」であるともいえましょう。
 この作文コンクールに初トライしたい学生の皆さん、また今回は残念な結果に終わったものの、次回以降ぜひ再チャレンジしたい学生の皆さん、そして現場の先生方、本書シリーズの読者の皆様にはぜひ、これら先生方の指導法や講評を参考にしていただけたら幸いです。

 入賞作品は最終的にこのような結果となりましたが、順位はあくまでも一つの目安でしかありません。最優秀賞から佳作賞まで入賞した作品は、どの作品が上位に選ばれてもおかしくない優秀なできばえであったことを申し添えたいと思います。
 いずれの作品にも、普段なかなか知り得ない中国の若者たちの「本音」がギッシリと詰まっていました。中には、日本人にはおよそ考えもつかないような斬新な視点やユニークな提言もありました。そうした彼ら彼女らの素直な「心の声」、まっすぐで強いメッセージは、一般の日本人読者にもきっと届くであろうと思います。

 日本の読者の皆様には、本書を通じて中国の若者たちの「心の声」に耳を傾け、それによってこれからの日本と中国の関係を考えていただくほか、日本人と中国人の「本音」の交流のあり方についても思いを致していただければ幸いです。

 なお、本書掲載の作文はいずれも文法や表記、表現(修辞法など)について、明らかな誤りや不統一が見られた箇所について、編集部が若干の修正を加えさせていただきました。その他、日本語として一部誤りや不自然な箇所があったとしても「学生の努力の跡や成長の過程が見られるもの」と受け止め、そのまま掲載いたしました。
 また、本書の掲載順は、一等賞から三等賞までが総合得点の順、佳作賞が登録番号順となっております。併せてご了承いただけましたら幸いです。

■結果報告と謝辞■
  日本僑報社・日中交流研究所が主催する「中国人の日本語作文コンクール」は、日本と中国の相互理解と文化交流の促進をめざして、2005年にスタートしました。中国で日本語を学ぶ、日本に留学経験のない学生を対象として、2017年で第13回を迎えました。
この13年で中国全土の300校を超える大学や大学院、専門学校などから、のべ3万7202名が応募。中国国内でも規模の大きい、知名度と権威性の高いコンクールへと成長を遂げています。作文は一つひとつが中国の若者たちのリアルな生の声であり、貴重な世論として両国の関心が高まっています。

 第13回日本語作文コンクールは従来通り、日本での半年以上の留学経験のない中国人学生を対象として、今年は5月8日から31日までの約3週間にわたり作品を募集しました。  厳密な集計の結果、中国27省市自治区・特別行政区と日本の大阪府(計28)の189校(大学、大学院、専門学校、高校)から、計4031本もの作品が寄せられたことが明らかとなりました。そして今回も、近年に並ぶ最多クラスの作品数を記録しました(1人につき複数の応募もあるため、作品数はのべ数とする)。  日中関係は2017年、国交正常化45周年の節目の年を迎え、この重要な機会を生かして一層の関係改善を図ろうとする期待が高まりました。こうした前向きな両国関係の背景をとらえ、中国で日本語を学ぶ若者たちの日本語学習熱が一定して高いことが示された形となりました。
 詳しい集計結果を見ると、応募総数4031本のうち、男女別では男性636本、女性3395本。女性が男性の5倍を超えて、圧倒的多数でした。

 今回のテーマは(1)日本人に伝えたい中国の新しい魅力 (2)中国の「日本語の日」に私ができること  (3)忘れられない日本語教師の教え――の3つあり、テーマ別では(1)2476本(2)452本(3)1103本  という結果で(1)が最多となりました。
 (1)が最も多かったのは、年々増加を続ける訪日中国人客(2016年は過去最多の637万人を記録)に比べ、訪中日本人客が減少し、人的往来のアンバランスが生じている中、日本人に中国の新たな魅力をアピールし、中国により関心を持ってもらいたい、訪中日本人客の増加につなげたいと熱心に考える中国の学生が多かったためと見られます。

 コンクールは、現任の在中国日本大使ご自身による審査で最優秀賞・日本大使賞を決定していただきました。また3位までの上位入賞作(81本)は「受賞作品集」として本書にまとめ、日本僑報社から出版しました。
 表彰式は2017年12月12日(火)、北京の日本大使館で開催。最優秀賞受賞者は、副賞として翌2018年、日本に1週間招待される予定です。

 在中国日本大使館には第1回からご後援をいただいております。第4回からはさらに最優秀賞に当たる「日本大使賞」を設け、歴代大使の宮本雄二、丹羽宇一郎、木寺昌人、および現任大使の横井裕の各氏には、ご多忙の中、直々に大使賞の審査をしていただきました。
 ここで改めて、歴代大使と横井大使をはじめ大使館関係者の皆様に、心より御礼を申し上げます。

 また、第2回から第6回までご支援いただきました日本財団の笹川陽平会長、尾形武寿理事長の本コンクールへのご理解と変わらぬご厚誼にも深く感謝を申し上げます。
 そして第7回よりご協賛をいただいている株式会社ドンキホーテホールディングスの創業会長兼最高顧問、公益財団法人安田奨学財団理事長の安田隆夫氏からは日本留学生向けの奨学金制度設立などの面でも多大なご支援を賜りました。これは中国で日本語を学ぶ学生たちにとって大きな励みと目標になるものです。ここに心より感謝を申し上げます。

 第9回からは、公益財団法人東芝国際交流財団にもご協賛をいただいております。改めて御礼を申し上げます。
 朝日新聞社には、坂尻信義氏(元中国総局長)のおかげで第7回からご協賛をいただき、第10回からはメディアパートナーとしてご協力いただいております。現任の古谷浩一総局長をはじめ記者の皆さんが毎年、表彰式や受賞者について積極的に取材され、その模様を生き生きと日本に伝えてくださっています。それは日中関係が難しい状況にある中でも、日本人が中国をより客観的にとらえ、中国により親近感を持つことのできる一助になったことでしょう。同社のご協力に心より敬意と感謝の意を表します。

 谷野作太郎元中国大使、作家の石川好氏、国際交流研究所の大森和夫・弘子ご夫妻、中国日本商会事務局の中山孝蔵さん、さらにこれまで多大なご協力をいただきながら、ここにお名前を挙げることができなかった各団体、支援者の皆様にも感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。
 また、マスコミ各社の皆様には、それぞれのメディアを通じて本コンクールの模様や作品集の内容を丁寧にご紹介いただきました。そして日中“草の根交流”の重要性や、日中関係の改善と発展のためにも意義深い中国の若者の声を、広く伝えていただきました。改めて御礼を申し上げます。

 中国各地で日本語教育に従事されている先生方に対しましても、その温かなご支援とご協力に感謝を申し上げます。これまでに中国各地の300校を超える学校から応募がありましたが、このように全国展開できた上、今回の応募数が第1回(1890本)の2倍超に増加するなど、本コンクールがこれほどまでに知名度と信頼を得られたのは、教師の皆様のご尽力のおかげです。

 最後になりますが、応募者の皆さんにも改めて御礼を申し上げます。まず、皆さんの作文は力作、労作ぞろいであり、主催者はこれまで出版した作文集をたびたび読み返してきました。そしてその都度、皆さんのような若者ならではのパワーとエネルギーに刺激を受けて、現在の日中関係を、民間人の立場からより良いものにしていくための勇気と希望を抱くことができました。
 さらにこの13年間、本コンクールは先輩から後輩へと受け継がれてきたおかげで、いまや中国の日本語学習者の間で、大きな影響力を持つまでになりました。現在、過去の応募者、受賞者の少なからぬ人たちが、日中両国の各分野の第一線で活躍しています。
 皆さんが学生時代に本コンクールに参加して「日本語を勉強してよかった」と思えること、また日本への関心をより深め、日本語専攻・日本語学習への誇りをより高めていると聞き及び、私は主催者として非常に励まされています。
 また、皆さんのように日本語を身につけ、日本をよく理解する若者が中国に存在していることは、日本にとっても大きな財産であるといえましょう。皆さんがやがて両国のウインウインの関係に大きく寄与するであろうことを期待してやみません。

 毎年、作文コンクールはさまざまな試練に立ち向かっています。それを乗り越え、本活動を通じて、日中両国の相互理解を促進し、ウインウインの関係を築き、アジアひいては世界の安定と発展に寄与する一助となることを願い、私どもは今後の歩みを着実に進めてまいります。
 引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

2017年12月吉日

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