国の枠を越えていく若者に期待

『第三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集』序文

 

日本財団会長 笹川陽平

 

 

今年も、「中国人の日本語作文コンクール」の入賞作文が届きました。

これを拝読するのが、この時期の楽しみになっております。

 

二〇〇五年から日本僑報社・日中交流研究所が主催している本コンクールも、第三回目となられました。本年は学生の部で九十九大学から一四五二編、社会人の部では二一編の応募があったそうです。

今回からはじめて社会人の募集を行ったそうです。「社会人の部を作ってほしい」とかけられた国際電話を無碍にすることなく、応募の機会を設けた姿勢に、敬意を表したいと思います。応募数は二一編と学生の部に比べれば少ないことは否めませんが、学んだ日本語を活かして職に就いている応募者ならではの、きらりと光る珠玉の作品が多くあったと聞いています。

 

今年の学生の部・最優秀賞は、陳讌馨さん(曁南大学)の「電子廃棄物汚染から考える日中環境保護協力」です。陳さんは、中国に輸入される産業廃棄物に着目し、中国は環境問題にしっかりと取り組み、産業廃棄物の輸出国である日本も考えなくてはいけないとまとめています。

最後に、陳さんは「環境保護をキーワードに、国家という狭い枠を乗りこえて」日中は協力して行かなくてはいけないと述べています。この国家という枠に我々が、どれほど縛られているか。

 

今、日中関係は大きく改善されつつあります。その背景には、温家宝総理の訪日や国交正常化三五周年、北京オリンピックなど関係改善を図ろうとする両国政府の意図があります。しかし、それだけではなく、民間レベルから国を超えて日中交流を支えてきた、また支えようとしている中国の日本語学習者を忘れてはならないと思います。

 

中国の日本語学習者、学生諸君、そして社会人諸氏へ、私は期待します。 

 

私も負けていられません。作文ではありませんが、二十一世紀における日中民間交流のあり方をテーマに、私の考えをまとめた拙著があります。二〇〇二年に日本僑報社から出版されました『二千年の歴史を鑑として――二十一世紀における日中民間交流のあり方』(日中対訳版、上の写真は中国語版の表紙です――編者注)という本です。その中で、小異を存して大同につく、という周恩来先生の言葉を引用しています。二国間がこれから未来永劫にわたって、協力関係を作るためには、両国の国民一人ひとりが注意深くお互いの違いを認識しながら、大同につくという精神が肝要と思うからです。

日中対訳版なので、ぜひ読んでほしいと思います。国の枠をいかに超えるか、私なりの答えです。

 

運営が大変であると聞きますが、本コンクールが今後とも継続され、日中関係に携わり、国の枠を超えていく若者たちの道標となることを願います。

二〇〇七年十月        

 

 

(※本文は『国という枠を越えて―第三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集』より転載。『国という枠を越えて』は2007年11月30日刊行。定価1800円、ご注文先はhttp://duan.jp/item/066.htmlへどうぞ)

 

 

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