【内容紹介】 日中問題・環境問題・社会モラル・健康志向・庶民の話題など15章 『人民日報』の重要・注目記事60編を厳選・邦訳した中国人自身も知らなかった最新の中国事情を日本にいながら概観できるシリーズ第7弾。 【前書き】 今年もお蔭様でシリーズ第七冊目を無事発刊する事ができました。これも一重に読者の皆様からの変らぬご支援の賜物であり、心から御礼申し上げます。 さて、二〇一二年という年は、本来、国交正常化四〇周年を記念する「国民交流友好年」であったにもかかわらず、周知の如く、尖閣列島領有権問題で、日中関係は一九七八年の改革開放政策スタート以来、最悪の年となりました。 二〇一二年は世界的に見ても各国のリーダーが大幅に入れ替わった年であり、日中もその例に漏れませんでしたが、そういう場合の通例として、対外政策が国内世論に迎合した強硬路線に傾きがちになります。日中間にもこの底流が存在していたことは認めざるを得ません。 日本側は、民主党と自民党がしのぎを削り、中国は党大会を控え、薄熙来問題も含め、激烈な権力闘争が水面下で進行し、どちらも対外融和路線を主張した者は負け犬になる、といった状況にありました。しかし、今回の衝突をそれだけで解釈するわけにはいきません。今後の関係修復を図る上でも、両国の対応にそれぞれ問題はなかったか、それぞれの主張の根拠も含め、真摯かつ客観的な分析検討が求められます。 今回収録した記事の中には、尖閣関係の記事は収録してありません。収録対象期間が二〇一一年九月から二〇一二年八月であり、尖閣問題の激化が九月以降ということもありますが、この本の趣旨が、そういった派手な動きに惑わされず、今の中国の様々な実情を浮き彫りにするところにあるからです。こういう時こそ、視野を広くした多角的観察が肝要でしょう。 新しい習近平政権がスタートし、二〇一三年春の全人代で、国務院の新たな顔ぶれも決まりました。国務院の新主要メンバー三三名は、二七名が大学院レベルの学歴を持ち、革命家・技術者から経済を中心とした知識人へと指導者層が移行しつつあることを印象付ける一方、楼継偉財政部長、高虎城商務部長、王毅外交部長と、経験豊かで着実な手腕を備えた重厚な布陣を敷き、なおかつ、部長級二五人の内一六人を留任させるという、継続を重視した堅実性もその特徴と言えます。とりわけ、王毅外交部長は、日本・台湾・北朝鮮いずれに対しても外交部きっての専門家であり、経験も豊かで、その手腕が期待されています。 新指導陣は、まずは進行中の第一二次五カ年計画遂行と、それに基づく第一三次五カ年計画の立案に取り組むことが求められますが、問題はまさに山積と言えましょう。 経済構造の転換はもう待ったなしですが、国有企業の改革は、既得権にしがみつく勢力の抵抗が激しく、資金難にあえぐ中小企業を救うために民間金融に門戸を開いた温州改革は、間違えれば、共産党政権にとってパンドラの箱の蓋を開けることになりかねません。国内消費の喚起や都市と農村の格差是正を目指した都市化とそれに伴うスマートシティの推進は、地方政府の土地収用による錬金術の格好の餌食にも。また、急速な経済発展のツケは環境破壊を深刻化させ、それに地球温暖化による異常気象が加わって、大気汚染・砂嵐・洪水干害による災害が続発し、都市の防災も危機的状況になっています。 その一方で、地域発展の勢いはとどまるところを知りません。最近注目されているのが、東部西部の発展に対し、立ち遅れていた中部経済圏のテコ入れで、既に同経済圏は、北部は河南省鄭州市を中心とし、周辺諸省と連携した中原経済圏を、南部は湖北省武漢市を中心に、湖南省・江西省を結ぶ中三角地域を形成、それぞれ独自の発展戦略を構築しつつあります。 人々の生活に目を向けると、小康社会の実現と共に、より豊かで安定した社会を目指し、新たな問題がクローズアップされています。「八〇後、九〇後」が結婚、育児の時代に突入し、彼らの都市への定住と戸籍問題、それに伴う結婚・住居にかかわる問題、高齢化社会に伴う老後の問題、更に生活に密着した問題として、医療衛生、食品薬品の安全、教育や就職にも目配りが必要です。 ルイス転換点を超えた後の問題とそれを見越した人口政策のかじ取り、中進国の罠に陥って都市のスラムを恒常化させないための取り組み、いずれもが新政権に課せられた重い課題と言えましょう。 平成二五年春 NPO法人 日中翻訳活動推進協会「而立会」理事長/監訳者 三潴 正道 ---------------------------------------------- ---------------------------------------------- 【訳者紹介】 [NPO法人]日中翻訳活動推進協会「而立会」。20 0 4 年、三瀦正道氏が中国の良書を日本に紹介し日中の相互理解を深める事を目的に設立したグループ。20 1 0 年、NPO法人化。氏の考案した論説体中国語レベル別ステップアップ式学習法によるレベル30突破者で構成。公務員、企業関係、教員、マスコミ関係など百名を超す会員を擁する。レベル別学習教育は年2回(4月・9月開始、各15 週)行われている。参加問い合わせは而立会事務局まで。 ホームページhttp://www.jiritsukai.org/ 【本書の訳者】 井田綾、伊藤美亜、及川佳織、大山いづみ、金子伸一、川口亮子、清本美智子、古賀啓一郎、小島宏司、齋藤安奈、下山理定、杉浦久夫、陶山聖子、高崎由理、高橋永津子、張進旺、富窪高志、寺岡淳子、徳山佳樹、南條英子、野澤靖之、畑村洋子、平野紀子、平山ゆき、廣瀬篤子、広瀬由美子、古屋順子、宝賀紀子、三好浩子、村上美穂、牟礼朋子、森宣之、安場淳、山口学、吉田祥子、米沢洋(五十音順、敬称略) 【校閲者】 金子伸一、高崎由理、古屋順子、柳川俊之 【監訳者略歴】 三潴正道 19 4 8 年生まれ。東京外国語大学大学院修了。現在、麗澤大学外国語学部教授、NPO法人日中翻訳活動推進協会(而立会)理事長、(株)海外放送センター顧問。時事中国語・日中異文化コミュニケーションの専門家。企業の中国研修講師として広く活躍。著書・訳書に、『「氷点」停刊の舞台裏』『必読!今、中国が面白い』-20 0 7 年版以降毎年出版(以上日本僑報社)、中国語論説体&ビジネス中国語用テキストとして、『論説体中国語読解力養成講座』(東方書店)、『ビジネスリテラシーを鍛える中国語T、U』『時事中国語の教科書』シリーズ(以上朝日出版社)など。20 0 1 年よりweb上で毎週、中国時事コラム『現代中国放大鏡』を連載。 ------------------------------------------------------- 必読!今、中国が面白い 2013-14 訳者 而立会 監訳 三潴正道 出版 日本僑報社 判型 A5判352頁並製 定価 2600円+税 発行 2013年7月1日 ISBN 978-4-86185-151-3 C0036 注文先 http://duan.jp/item/151.html ------------------------------------------------------- |