第七回「高等学校科学研究優秀成果賞」 中国教育部三等賞
第14回華人学術賞受賞作品
【推薦の言葉】 日本の漫画史研究の空白部分。近年漫画研究が盛んになりつつも、戦前の新聞連載子ども漫画の研究は捨ておかれたままにあった。そうした未知の領域がいまここに明らかになる。一般的にこの時期の漫画作品としては、「正チャンの冒険」「フクちゃん」「スピード太郎」などの作品が著名。それらの漫画は新聞そのものが昭和に入って全国紙の体裁をととのえたため、日本中の多くの子どもたちに親しまれた。しかし、こうした有名な作品以外にも、当時の新聞には多数の漫画が連載されていた。そうした事実はあまり知られていない。児童文化研究が盛んになった今日においても、この分野についての知見は乏しく、未知の領域として研究成果が長らく待たれていた。――竹内オサム・同志社大学大学院教授の推薦文より ------------------------------------------------ ------------------------------------------------ 【内容紹介】 日本の近代漫画は、明治時代後期から新聞というメディアで出現した。とくに子ども向けの雑誌や書籍が発達する以前は、子ども漫画が一般新聞に数多く掲載されていた。しかしながら、戦後の漫画文化についての研究が盛んに行われているのに対し、戦前の漫画の歴史についての研究はいまだに少ない。 本書は東京で発行された新聞を題材にして、子ども漫画が出現し始めた明治後期から敗戦までのおよそ50年間の、新聞連載子ども漫画の歴史を明らかにする。 本書は二つの部分に分けて論説を展開していく。 まず第一部にあたる第一章と第二章では、時期区分をしながら、新聞連載子ども漫画の全体的な掲載状況を明確する。つまり、新聞連載子ども漫画誕生以前、黎明期、成長期、発展期、繁栄期、そして定着期のそれぞれの社会背景と作品の特徴を分析する。 次に第二部では、さまざまな角度から新聞連載子ども漫画のあり方を立体的にとらえる。なかでも第三章は三大ジャンルの作品の誕生と発展を明らかにして、新聞と漫画の性格を論じる。第四章は、漫画に登場する主人公像を少年像、少女像、擬人化動物像に分けて変遷を考察したうえで、子ども像が社会文化とどのような相関性があるのかを説明する。第五章は漫画の表現形式の変遷を描き、新聞4コマ漫画という形式の定着過程を解き明かす。 最後に終章では、もっと大きな視野で戦前の新聞連載子ども漫画の日本漫画史における位置づけを論じ、結論を展開する。 本書は著者が三年間にわたって調査・収集してきた日本の新聞連載子ども漫画についての研究成果である。なかでは今まで掘り出されていなかった子ども漫画作品が多く紹介され、詳細なデータを提示した。膨大な数の一次資料をもとにして、戦前の子ども漫画の掲載状況、内容、主人公像、表現形式といったさまざまな変遷を辿ってきた。 本書は、日本漫画史研究の分野において学術的空白を埋めた研究だといえる。日本近代漫画の歴史や漫画文化の形成を理解するために大変役立つ一冊である。 ------------------------------------------------ 【著者紹介】 徐園(じょ えん) 1981年 中国山東省に生まれ。 2000年〜2004年 吉林大学外国語学部日本語学科 学士 2004年〜2006年 中国人民大学大学院日本語研究科 修士 2006年〜2010年 同志社大学社会学研究科メディア専攻 博士 2010年〜現在 中国人民大学外国語学部日本語学科 講師 主論文 ・「初期の新聞子ども漫画に見られる動物擬人化表現考 ̄ ̄大正期『万朝報』の「日曜漫画」欄を中心に」(『マンガ研究』第15号、2009年) ・「新聞連載子ども漫画の表現形式の変遷 ̄ ̄今日の表現形式はいかにして成立したか」(『評論・社会科学』第89号、2009年) ・「ジャンル別に見た初期の新聞連載子ども漫画」(『ビランジ』第28号、2011年)など ---------------------------------------- 著 者:徐園 発行日:2013年3月20日 サイズ:A5判、上製 ページ数:384頁 ISBN:978-4-86185-126-1 C0036 定価(税抜):7000円 注文先 http://duan.jp/item/126.html |