【内容紹介】 中国のサッカーファンがアジアカップの日本チームが出場する試合において、「歴史を直視しアジアの人民に謝罪せよ」・「サッカーは世界のものだが釣魚(尖閣諸)島は中国のもの」などのスローガンをもちだし、大声を張り上げ、少なからず行き過ぎた行為をしでかした。中国のサッカーファンが政治的な感情をスポーツに持ち込むやり方に対して、私たちは非常に遺憾に感じており、論外である。しかし、一部の日本のメディアは必要以上に大きく扱い、また日本の政治家がこれを大きく取り上げて問題にしたことは無視できないものである。例えば、自民党女性局長の西川京子は、「中国のサッカーファンのアジアカップにおける〈異常〉な行動は、中国政府の反日教育の結果ではないだろうか」。フジテレビは外務大臣川口順子と防衛庁長官石破茂を招いて、中国の歴史教育に対して苦言を呈している。「完全に中国の反日感情を取り除くためには、まず中国の歴史教科書における抗日戦争史を取り除かなければならない」。川口外相は、日本政府の態度を発言ににじませている。「今回の反日問題に関して日本は中国に十回あまりの抗議を行っている。教科書についてもすでに日本の特別組織を通じて中国側との検討を行っている。不適切な箇所に関しては反対意見を出して正していくことを要求している」。まさに、日本側は今回の中国側の弱みに付け込むことで「歴史問題の原因は中国側にある」といった論調が噴出した形である。 日本側(政府や一部の政治家、メディア・学者などを含む)に対して、今回の中国人サッカーファンによる「対日嫌悪感」という機会を借りて、八つの論点を立て、私たちの個人的な考え方を発表させて頂くことで日本側との論争を望んでいる。その目的は、こうした問題が、はたして誰の問題なのかを検討するためであり、それを通して解決するための道筋を探し出すためでもある。 --------------------------------------------------------------- ●目次● ■はじめに 中国人のサッカーファンがアジアカップにおいて日本チームに示した感情は、「反日感情」ではなく、「対日嫌悪感」である。 ■反論一 日本側…中国政府は中国民衆の「反日感情」を煽動している。九〇年代初頭から始まった愛国主義教育によって、数多くの愛国主義教育基地が現在の偏狭な民族主義に発展しており、アジアカップの中国人サッカーファンの「反日感情」の原因となっている。 ■反論二 日本側…日本の元首相村山富市がすでに侵略戦争を認めて反省・謝罪を行っている。 ■反論三 日本側…日本は軍隊を持つべきであり、よって「平和憲法」を改定する必要がある。 ■反論四 日本側…日本は国連安全保障理事会の常任理事国になるべきである。 ■反論五 日本側…小泉首相の靖国神社参拝は正当な行為である。 ■反論六 日本側…日本は侵略戦争を美化していない。 ■反論七 日本側…日本民衆の「対中嫌悪感」は、中国への「脅威」から感じている。中国の軍事費が不透明である。釣魚(尖閣諸)島は日本古来の領土であり、中国は不相応な要求をしている。こうして日本民衆の反感はつくられている。 ■反論八 日本側:中国は今歴史問題にこだわるべきではない。発展と国力が強まり中国が強大になるのを待てば、強硬な民族主義は柔軟な民族主義へと変化して、日中関係において歴史問題は問題となりえなくなる。韓国はまさにこうした経過を経ており、現在の日韓関係において、歴史問題はすでに解決済みである。 --------------------------------------------------------------- 【著者紹介】 王智新 1952年北京生まれ。1975年上海外国語大学日本語科卒。1988年千葉大学教育学研究科修士課程修了。1993年東京大学教育学博士。1994年より宮崎公立大学助教授、1998年同大学教授。著書、『近代中日思想の比較研究』『現代中国教育』『つくる会の歴史教科書を斬る―在日中国人学者の視点から』 ほか。 呉広義 1950年中国黒龍江省生まれ。1982年、中国人民大学歴史学部卒。中華書局編集者、副編審を経て、1999年中国社会科学院世界経済と政治研究所国際戦略研究室研究員。主要な著書:《戦争と反省―戦争と罪責》、《世界リーダ格人物像》 ほか。 |