第一回 中国人の日本語作文コンクール 開催報告と謝辞 日本僑報社・日中交流研究所 所長 段 躍中 ■開催経緯■ このたび、日中交流研究所の主催する「第一回中国人の日本語作文コンクール」を無事に開催することができましたこと、関係者の皆さんに心から御礼を申し上げます。 国際交流研究所大森和夫・弘子ご夫妻をはじめ、国際交流基金、中国日語教学研究会、北京日本学研究センターなど皆様の温かいご指導ご支援、多くの作文を送って頂いた八十五カ所の大学の先生方と一八九〇名の大学生の皆さん、第一次及び第二次審査を担当していただきました皆様、作文コンクールを後援してくださいました各団体、そして「第一回中国人の日本語作文コンクール」表彰式にご支援ご協力くださいました皆様に心から感謝致します。 今回の作文コンクールは、募集要項に書きましたように、国際交流研究所の大森和夫・弘子ご夫妻が個人的に日中友好のため二〇〇四年まで十二回続けてきた「中国の大学生、院生『日本語作文コンクール』」を継承したコンクールの第一回です。私たちにとって初の開催であったため、不慣れな部分が多くあり、皆様に多大なご迷惑をかけたことに対して、心からお詫びを申し上げます。 作文募集から審査まで、大森先生ご夫妻からいろいろノウハウをご指導いただき、困ったとき、分からないときはいつも相談に乗っていただきました。この場を借りて大森先生ご夫妻に深くお礼を申し上げます。 今回は、大森先生への敬意を込めて、前の十二回にはなかった「特賞・大森和夫賞」を設けさせていただきました。六十四本の受賞作品の中から、もっとも得点の高い優れた一本を選びました。初の大森賞に受賞された学生に心からお祝いを申し上げます。 開催に関する詳しい経緯は別ページに掲載しました「毎日新聞」への寄稿をご覧ください。 ■審査の経過■ 一次審査 日中交流研究所の母体である日本僑報社の横堀幸絵さんと金田雪さんがすべての作文を読みました。審査基準は、大まかに「日本語文章力・五〇点」、「内容・五〇点」です。一〇〇点満点で採点し、まず、「入賞候補・一〇〇編」を選びました。内容の問い合わせなどをした上で、二人の採点の合計点の「上位六十四編」を「特、一、二、三等賞候補」としました。 二次審査 ボランティアで協力していただきました下記の八名の先生方が担当しました(五十音順)。 大森 和夫(国際交流研究所長) 五十嵐 貞一(国際空港上屋株式会社社長・NPO中国留学生交流支援立志会理事長) 五十川 倫義(朝日新聞論説委員、前中国総局長) 川村 恒明(神奈川県立外語短期大学学長) 木下 俊彦(早稲田大学教授) 関 史江(東京大学大学院助手) 高見澤 孟(昭和女子大学大学院教授) 谷川 栄子(日本大学非常勤講師) なお、より公平を期するため、二次審査のときは、応募者氏名と大学名称は隠して対象作文を先生方に配布しました。 審査員の方々は、多くのメッセージを寄せていただきまして、ありがとうございます。ここに谷川栄子先生の講評を掲載させていただきます(当方への諸連絡が書かれた部分は割愛いたしました)。応募者名を伏せて審査に付したため、講評に具体的氏名は書かれておりません。 段 躍中先生 いつも大変お世話になっております。 さて、大変遅くなりましたが、先程「中国人の日本語作文コンクール」第二次審査の採点をし、その結果をFAXさせていただきました。 作文は、できるだけ公平を期すために、この二日間でほとんど一気に読ませていただきました。以前、大森さんにも申し上げていましたが、いつもながら、皆さんの日本語力の高さと真剣な姿勢には本当に頭が下がります。私などがこうした「審査」をしていいものかどうか、いつも考えさせられるほどです。こんな素晴らしい作文をたくさん読ませていただけるのは正に「役得」で、本当に有難いことと心から感謝しております。以下、簡単ですが、講評に代えて感想を述べさせていただきます。 テーマとしては、今春の「反日デモ」等の動きを経て、やはり「中日友好」が多かったようです。いずれも日本語を学ぶ中国人学生ということから、日中の間にあって、いろいろな面で迷い、考え、行動し、時には辛く苦しい立場にある彼らの様子がひしひしと伝わってくるような文章ばかりで、日本人としては、心苦しい限りです。今回の採点では、先述のように皆さん素晴らしくほとんど差がないので、日本語の差は「文法」というよりはむしろ文を効果的に切ったり止めたり、分かりやすい表現でストレートにその意味が伝わるものがいくらか得点が高かったのではないかと思います。内容的には、これも甲乙つけ難いのですが、私の採点の場合は自分の置かれている立場や経験を通じて見聞きし考えたことを、何らかの具体的な行動や目標にまで持っていく過程をこの作文の中にまとめ表現できた方が、八〇点台後半から九〇点台にかけての高得点につながったと考えます。一七八番さんは「五万円」を中心に自分に降りかかった不運を目標へと昇華させていますし、一七四六番、一七四七番さんは、それぞれの経験から同様に自分のやるべきことをはっきりと提示しています。一八九〇番さんも、「折鶴」という象徴を以って、平和と友好の発展に自分達が寄与できることを、身をもって示しています。家族や親戚、友人や先生等との関わりを通して、みなさん本当にいろいろなことを考え、経験し、今後の自分ができることすべきことを考えているのは、本当に立派で、有難いことと思います。 私事ですが、前期に大学の「アジア地域概論」という授業の中で中国の思想や文化を中心に話をしましたが、最後に「日中関係」について四〜五回かけて話しました。「反日デモ」の報道もあったので、今まであまり中国について知識や興味関心の少なかった学生の間でも、かなり積極的に真剣に参加してくれました。その中で、中国側の一つの考えを知ってもらう手立てとして、大森さんから送っていただいていた前回の作文コンクールの受賞作品も紹介させていただきましたが、これには大変大きな反響がありました。中でも多かった感想は「大学から学び始めたのに日本語がこんなに上手で、日本や日中関係のことをこんなに真剣に考えている中国人学生がいることに大変驚き、有難いと思った。自分ももっと中国のことを知り、日中関係のことを考えていきたい」というものでした。彼らのこうした作文が、生の声として伝わることを改めて実感させられた次第です。 段先生をはじめ、この作文コンクールを継続していくことは本当に大変なご苦労があることと思います。微力ながら、今後ともできる限りの協力をさせていただきたいと思っておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。 以上、長くなりましたが、作文コンクールについて申し上げました。 本当に有難うございました。 末筆ながら、段先生および日本僑報社の今後ますますのご活躍とご発展をお祈り申し上げます。 二〇〇五・九・二 谷川 栄子 ※ 「第一回中国人の日本語作文コンクール」に対し、以下の団体及び個人からご寄付をいただきました、感謝の意を込めてご芳名をここに公表します。 国際交流研究所、国際交流基金、中国留学生交流支援立志会、株式会社ジャパンジャーナル、東崎実業有限会社、大森寿明、汪正義、五十嵐貞一、林斯福、上原栄子、何宜動、高島康子、小林治平、塩島俊雄(敬称略、受付順) 「第一回中国人の日本語作文コンクール」表彰式に、全日本空輸株式会社、カシオ計算機株式会社からご協賛いただきました、感謝の意を表します。 ※ 本書の校正につきましては遠藤英湖さんがご協力くださいました。ありがとうございました。 本書に掲載しました作文は、最低限の校正しか行わず、日本語として不自然な部分が多少あっても学生の努力のあとが見えるものと考え、残してあります。また、特賞・一等賞・二等賞については学生もしくは学校と連絡をとり、写真を掲載しましたが、一部どうしても連絡がとれなかった学生については、写真を載せることができませんでした。以上二点ご了承ください。 皆さんの温かいご協力に心から感謝申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。 (日本僑報社『日中友好への提言2005』より転載) |