【池袋移転15周年の歩み・その三】

日中翻訳学院創設

ハイレベルの出版翻訳人材を育てる

 

 

 

 

日本僑報社は北京五輪がフィナーレを迎えた2008年9月、中国語・日本語翻訳におけるプロフェッショナル人材を育成する「日中翻訳学院」http://fanyi.duan.jp/ を創設した。

 

これは日中間の交流が質量ともに発展し、実戦的できめの細かい中国語技能への需要が高まっていた当時、「よりハイレベルな中国語人材の育成」を目的に設立したもの。時代のニーズをいち早く捉えた、幅広い“学びの場”の提供を始めたのである。

 

日中翻訳学院は、文芸作品、学術書、ビジネス書など、とくに出版翻訳の第一線で活躍できるプロフェッショナル人材の育成を目指している。「日文中訳」「中文日訳」の目的別にコースを設け、それぞれに厳選されたオリジナル教材を使用。中国語翻訳の理想と言われる「信・達・雅」(忠実に、なめらかに、美しく)を目標に、より高度な表現力を磨いている。

 

一流の講師陣、学びやすい受講料で応援

 

受講生への指導は、中国語翻訳人材の養成に豊かな経験と実績をもつ一流の講師陣が担当している。これまでに開設した主な「塾」(講座)は、翻訳家の武吉次朗先生による中文日訳「武吉塾」、現学院長である高橋弥守彦先生(大東文化大学名誉教授、日中通訳翻訳協会会長)による中文日訳「高橋塾」、翻訳家の鄭民欽先生による日文中訳「鄭塾」、翻訳家の田建国先生による日文中訳「建国塾」などである。

 

各塾では、メールによる添削指導を行う通信講座を中心に、学期末には講師と受講生が実際に顔を合わせ、講義や意見交換により学びを深めるスクーリングを開催。良心的な受講料と、受講生一人ひとりに対応した丁寧な指導で、着実なステップアップを図っている。

 

受講生は2020年8月までの約12年間で延べ300人に上り、優れた翻訳人材の裾野を広げている。また、中には長年継続して受講する人も多く、それぞれが翻訳のスキルを熱心に磨いている。

 

ロングセラーの『日中中日 翻訳必携』シリーズ

 

好評の「武吉塾」の授業内容を一冊に凝縮し、実戦的な翻訳のエッセンスを課題と訳例・講評で学ぶ『日中中日 翻訳必携』シリーズ(小社刊)がロングセラーとなっている。

 

いずれも「より良い訳文づくり」のヒントを満載しており、日本で中国語を学ぶ学生、一般社会人、シニア世代はもとより、中国国内(香港、台湾を含む)で日本語を学ぶ学生、大学院生の需要も大きい。

 

シリーズはこれまでに5点刊行しており、順に、@『日中中日 翻訳必携――翻訳の達人が軽妙に明かすノウハウ』(武吉次朗著、2017年第3刷発行) A『日中中日 翻訳必携 実戦編――よりよい訳文のテクニック』(武吉次朗著、2020年第2刷発行) B『日中中日 翻訳必携 実戦編2――脱・翻訳調を目指す訳文のコツ』(武吉次朗著、2016年) C『日中中日 翻訳必携 実戦編3――美しい中国語の手紙の書き方・訳し方』(千葉明著、2020年第2刷発行) D『日中中日 翻訳必携 実戦編4――こなれた訳文に仕上げるコツ』(武吉次朗編著、2018年)。うち3点が増刷となるなど、幅広い層から厚い支持を集めている。

 

翻訳者デビューを後押しし50点の訳書を出版

 

日中翻訳学院の修了生には、日本僑報社の翻訳人材データバンクへの無料登録などの特典がある。自ら出版と翻訳事業を手がける日本僑報社が主催する学院だからこそ、「学び」が「仕事」につながっている。

 

同学院からは、2020年8月までに共訳も含めて66人の翻訳者がデビューを果たし、計45点に上る訳書(小社刊)を世に送り出すことができた。学院の受講生、修了生による主な訳書は(紙面の都合でごく一部ではあるが)次の通り。

 

・『豊子ト児童文学全集』(全7巻)豊子ト著、日中翻訳学院訳

――世界中で読まれている中国児童文学の名作。「溢れでる博愛は子供たちの感性を豊かに育て、やがては平和につながっていくことでしょう」(海老名香葉子さん推薦)

 

・『中国政治経済史論―毛沢東時代』胡鞍鋼著、日中翻訳学院訳

・『中国政治経済史論―ケ小平時代』胡鞍鋼著、日中翻訳学院訳

――共産党指導者層に反響を巻き起こした「話題の書」の邦訳版、ついに出版!

 

・『習近平はかく語りき-中国国家主席 珠玉のスピーチ集』人民日報評論部編、武吉次朗監訳、日中翻訳学院訳

――14億の人心を掌握した珠玉のスピーチとは?「新時代」迎えた中国のキーワードを知るための習近平演説集。徹底解説付き、初邦訳本!福田康夫元首相推薦

 

・『わが七爸(おじ)周恩来』周爾鎏著、馬場真由美、松橋夏子訳(日中翻訳学院)

――周恩来の親族による知られざる歴史の真実。これは周恩来にまつわる真実の記憶であり、歴史の動乱期をくぐり抜けた彼らの魂の記録である。

 

以上、日中翻訳学院はこれからも講師をはじめ、受講生、修了生らの理解と支持を得ながら、よりよい講座の開催や訳書出版を目指して尽力していく所存である。