日中国交正常化45周年記念出版

『日本は李徳全を忘れない』刊行決定

 

李徳全氏と日本人女性と握手する

 

 

【日本僑報社発】日本僑報社はこのほど、1949年中華人民共和国(新中国)建国の後、中国紅十字会会長などを歴任し、残留日本人の帰国事業に尽力した李徳全女史(1896−1972)の軌跡をたどる『日本は李徳全を忘れない』(日本語版、程麻・林振江著、仮題)を刊行することを決定した。7月に発売される予定。

 

 戦後の日中関係を切り拓いた先達たちの中に、物腰柔らかく親しみやすい、特別な女性の姿があった。それはかつて国民党の将軍・馮玉祥の夫人であり、のちに中華人民共和国政府の初代衛生部長となり中国紅十字会会長も務めた李徳全女史である。

 

 新中国の建国初期、戦後中国大陸に残った日本人居留民と戦犯の引き揚げに協力したのが、李徳全以下、中国紅十字会の卓越した人道主義と慈善活動の業績であり、このことが戦後の日中関係を拓く重要な筋目ともなった。李徳全のこの特殊な歴史的役割は、日中両国政府と民間の、ひいては全世界の注目を集め、さらに日本人居留民と戦犯の家族にとっては感謝にたえない存在であった。そのため李徳全率いる中国紅十字会代表団の日本訪問は、日本国を挙げての「熱烈歓迎」を受け、日中両国の「民を以て官を促す」外交プロセスの感動的な一幕となった。その後の日中関係が順風満帆であれ紆余曲折あれ、両国の国民は李徳全の聖母のようなイメージとその訪日中の熱狂を思い出さずにはいられない。それは人々を励ますと同時に反省をも促し、両国の安定的、友好関係を保証する「重石」であった。

 

 現在の国際舞台の風雲の中にあって、日中両国の力関係は新たな局面に入った。日本の政界の有識者は李徳全とその訪日という歴史的な話題を取り上げ、この歴史のコマを巻き戻すことによってメディアや民衆の興味をかきたてた。そこで日中両国の学者が共同で、歴史的資料や新聞雑誌資料の収集にあたり、本書を上梓する。

 

 本書は上編、下編からなっており、上編では李徳全率いる中国紅十字会代表団の二度の訪日について多方面からその歴史的背景、実現までの経緯、エピソードなどを拾い上げていく。中国側の当時を知る人の述懐や、新聞報道、外務省の資料などを通して、李徳全の姿や日本と中国の社会状況をできるだけ詳しく再現するようつとめた。下編では李徳全に関する資料から、その波乱に満ちた生活や事業について読み解いていき、青年時代のキリスト教信仰、馮玉祥との婚姻、抗戦意識や慈善事業にかける思いなどを取り上げる。この本が日中両国の読者それぞれの期待に応え、互いの意思疎通と相互理解に資することを期待している。