中国の大学生

「日中友好8.15の会」訪中団と“旧交”を温める

 

 

 

【日本僑報社発】「中国人の日本語作文コンクール」(日本僑報社・日中交流研究所主催)受賞者の郭可純さん(中国人民大学)ら中国の大学生4人が、このほど訪中した「日中友好8.15の会」(日中友好元軍人の会)一行と北京のホテルで1年ぶりに再会、“旧交”を温めた。

 

郭さんは作文コンクール第11回で2等賞を、第12回で1等賞をそれぞれ受賞している。

 

日中友好元軍人の会(現・日中友好8.15の会)は1961年に設立された日本の民間反戦平和団体。以来50年余りにわたり、中国への侵略戦争に参加した元日本軍人の証言を掲載し、旧日本軍の犯罪を詳細に記録する反戦平和のための刊行物を編集、出版してきた。

 

日本僑報社では2004年より、その貴重な記録を歴史的資料として保存し、かつ日本の青少年に伝えていくため「反戦平和・世代友好シリーズ」として年1冊ずつ書籍にまとめて刊行している。

 

※『反戦平和・世代友好シリーズ(14)2016年の「8.15」』

日中友好8.15の会(日中友好元軍人の会)編、日本僑報社刊

 http://duan.jp/item/235.html 

 

郭可純さんは、この訪中団との交流の模様をしっかりとした日本語でまとめ、小社に報告してくれた。

 

「彼らが一衣帯水の隣国である中国との親密な絆を大切にし、さらに交流の輪を広げようとする姿に感銘を受けた」と感想を述べた上で、再会の喜びを松尾芭蕉の名句「命二ツの中に生きたる桜かな」になぞらえ、この句を「訪中団に贈りたい」と結んでいる。

 

以下、郭可純さんの報告と、中国側参加者の感想全文をご紹介する(原文ママ)。

 

■日中友好元軍人の会 北京交流記:待ちに待った1年ぶりの再会

郭可純(2017年3月30日)

 

2017年3月26日、日中友好元軍人の会の訪中団が北京歌華開元ホテルで、中国の大学生4名と交流した。宴会場で杭州料理を味わいながら、3時間に渡って留学話や日中関係など幅広い話題で気兼ねなく話し合った。

夕方5時半、沖松信夫団長をはじめとする日本友好「8.15」の会と、1年ぶりに再会した。今年94歳の沖松団長は、私を見るなりに「郭さん、お久しぶりです」と握手しにきた。相変わらず健勝だった。また、初対面の李さん(中国人民大学3年生)と侯さん(北京外国語大学3年生)の名前を聞き、ノートブックに書こうとした。見ると、前頁に書いてあるのは、なんと去年交流会に参加した5名の学生たちの名前とそれぞれのフリガナだった。すると、去年の今頃、同じ場所で団長一行と対面することを昨日の事のように覚え、あの時の緊張感と喜びが蘇ってきた。「懐かしいなあ」と趙さん(北京外国語大学3年生)が笑いながら囁いた。

 

今回日本側参加者は、沖松信夫氏、日森文尋氏、笠原博之氏、日比将人夫婦、加藤富士雄氏、と小寺研一氏だった。みんなが「心から日中関係の平和を祈る」熱い思いを込めて、日中友好のために様々な努力をしている。

高校先生の小寺氏が自分のクラスの中国人生徒5名を出席順番で一人ずつ紹介してくれた。それぞれの人柄と誕生日をしっかり覚え、自分の家族のように愛している。「年はだいぶ上ですが、今は仲良い親友ですよ」と、中国人学生のエピソードについて話が止まらなかった。 

 

書道先生である日比将人氏は、中国から伝わった書道の魅力を伝え、日本の「道」精神、「和」精神も教えてくれた。整体師である日比章子氏は、ご主人(日比将人氏)と共に中国と深い縁を結んでいるという。

また、今まで中国に何十回も訪ねたことのある日森文尋副団長は、「中国のビールは、10年前と比べてずいぶん美味しくなったな」と冗談半分で言った。

彼らが一衣帯水の隣国である中国との親密な絆を大切にし、さらに交流の輪を広げようとする姿に感銘を受けた。

 

今回のイベントに参加した大学生4名は全て日本への交換留学経験があり、「日本大好き」と自己紹介の時にアピールした。若いながらも誰にも負けない日本への愛情や、日中友好の架け橋になりたいという願望を持っている。また、日中関係や歴史問題などについて、自分なりの独特な見解を訪中団たちと語り合った。

このように、気楽な世間話と日中政治問題が相まって、ビールに合う「おつまみ」となっていた。 

宴がたけなわになった頃、プレゼントの交換コーナーに入った。日本側は、抹茶味のお菓子を贈り、中国側は北京の伝統お土産である「稻香村」のお菓子を団長に進呈した。

 

去年の報告では、私は「朋あり遠方より来る。また楽しからずや」という一文を引用した。

今年は、「命二ツの中に生きたる桜かな」という松尾芭蕉の名句を訪中団に贈りたい。桜の満開を迎える三月末に、日中友好元軍人の会と1年ぶりに再会した。私たち中国人学生と訪中団の皆さんの間に、また、中国と日本の間にも、桜が生き生きと咲きほこっているだろう。

 

 

■中国側参加者の感想

 

○ 今回のチャンスに恵まれて、日本の各業界の対中国友好の人々に会うことができることに嬉しいと思います。もしその夜の懇親会でなければ、私は日本の戦争反対の元軍人の考え方がわからないでしょう。彼らと交流する中、中日両国の人々は皆平和を守り続けたいという気持ちを実感しました。

また、その夜の参加者は元軍人以外、日本の各業界でいろいろ活躍している普通の人たちもいました。その中特に印象深いのは隣に座らせてくれた日比夫婦です。日比夫婦の仕事は非常に面白くて、一人は書道先生、もう一人は整体師です。

彼らとの会話で、私は中国と日本の共通のものを発見し、いろいろ勉強になりました。ことに書道先生の日比先生に「渋谷」の「渋」が「澁」から「渋」に簡単化された理由を教えてくれて、日本の漢字も中国の漢字も自分の独特の魅力を感じました。もしチャンスがあれば、これからも日比先生と中日の漢字の源流と発展についていろいろ交流したいと思います。 

(李志淵 中国人民大学3年生)

 

○ 今日は一年ぶりに日中友好「8.15」の会のメンバーさんたちにお目にかかりました。前の一年間、私は日本に交換留学し、身を以て色々体験したり、勉強したりして、日本の事情をより詳しく知るようになりましたからであろうか、今回皆さんとより一層深い話ができ、大変勉強になりました。

2時間という短い期間の中、私は何人かのメンバーさんと言葉を交わし、皆さんが抱かれている日中友好への強い願望 や中国文化への情熱等を感じて深く感動してなりませんでした。その中、団長さんとの交流が最も印象深かったです。

私は日本にいた時日本の若者と中日戦争に関して議論したことがありますが、今日元軍人であった団長さんに同じ話をしたら、全く異なる見解を伺いました。団長さんは94歳のご高齢ではありますが、この話題になると、真剣な顔をなさい、5分間以上もわたって沢山話してくださいました。日本の若者が言っている「日本はアメリカに負けたのじゃない?」ではなく、団長さんは「日本は確かに中国に負けました」とおっしゃい、その言葉を聞いた私が安堵させられました。

 

日本の現代教育において中日戦争の歴史がますます重視されなくなるにつれて、日本の若者はその歴史を知る由もなくなっていく中、日本にはまだ団長さんのような歴史の経験者がいらっしゃって、その歴史の真相に堅持し、それを次世代に伝えようとしていることは何よりも望ましく思います。

歴史問題が今日の中日友好関係の妨げになっている以上、私は団長さんの話を瞼に焼き付け、微力ながら日本のより多くの方々に歴史の真相を知ってもらいたいです。歴史を尊重する態度に基づいた両国の友好関係こそが真の意味の中日友好だと信じており、私なりの努力をしたいと思います。

(趙哲熠 北京外国語大学日本語学部3年生)

 

○ 日本といったら、桜、温泉や富士山など日本代表的なものをすぐに思い浮かべるでしょう。私にとって、それだけではない。日本語を専門として選んだ時、単に日本のアニメに興味を持っていただけだけど、この国を了解すればするほど、日本に心惹かれることになった。

交換留学一年間に住んでいた田舎におけるまるで手が届くような夏の青空、静かで揺れていてうとうとさせる電車、黙々として世を守っている神社など様々な思いから伝わって来た静けさはしっかり私の心に刻み込んだ。もちろん、都市の賑やかも日本の一部である。

その中、一番謎であるは日本人と言える。日本人との付き合いは毎日一番楽しいことになり、毎回も新しい発見が出てきた。いくら良い関係にも距離感があることやアイデンティティーをきちんと守っていることなど。教科書に紹介された「日本」と違い、本当の日本社会は私の目の前に開かれた。こういう日本を中国のみんなに紹介したい。

 

中国と日本両国は一衣帯水の隣国で、二千年にも及ぶ友好往来の歴史がある。だが、近代百年には概ね対立と戦争と言う暗い歴史である。後ほど日中平和友好条約を締結したが、両国民の間にある誤解はいつも存在している。私にしては、両国の人はお互いに偏見を持ち、新聞により新しい国を作り上げ本当の相手の国にする。そのうえ世論に左右されがちだ。

日本の高校生に中国に行くとは危なくないのと聞かれたこともある。中国に関しての知識は限られたものではないか。百問は一見にしかずという言葉があるのだ。従って、こういう中日平和交流会は非常に必要だと思う。まだこんなに多い人が中日平和のために努力している姿を見て感動した。各階層の人が中国に来て見て、日本を紹介する。そして本物の中国を日本に伝える。両国間友好の架け橋にこのような人の活躍は不可欠だと思う。これからも中日の交流もますます発展できるでしょう。

(侯竹子 北京外国語大学日本語学部3年生)

 

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