日本僑報電子週刊

「漢語角」の日中友好物語を連載開始

 

 

 

11月16日に配信したメールマガジン日本僑報電子週刊第1254号に、中華料理が結んだ縁――中国語サロン「漢語角」の日中友好物語(その1)が掲載されました。これは同メルマガが企画した中国語サロン「漢語角」の日中友好物語を連載の一回目です。

 

日曜中国語サロン「星期日漢語角」の参加者で、第8回「中国人の日本語作文コンクール」受賞者である思菡(し・かん)さん(ペンネーム、写真by段躍中)より、このほど「漢語角」に参加しての印象記をお送りいただきました。以下「その1」「その2」の2回に分けて、掲載させていただきます(原文ママ)。

 

■中華料理が結んだ縁

 

10月30日、秋の深まりを感じる日曜日の午後、西池袋公園の中国語サロンは日本語と中国語を飛び交い、相変わらず賑わっていた。そんな中、段先生が青色のコートを着た小柄な女性を連れて私の元にいらっしゃった。「ニイハオ!」その女性は自然な中国語で挨拶をしてくれた。「ニイハオ!」思いがけず中国語で会話が始まった。すると、段先生が「こちらは井本さん、中国語がすごく上手ですよ。」と紹介をしてくださった。えっ?日本人?どうして中国語の発音がこんなにきれいなのだろうと驚いた。

 

井本さんの話によると、彼女は大学時代に中国語を専攻として、大連に一年間留学していたらしい。そのあと、上海で五年ほど勤務し、二年前に東京に戻ってきて、現在は金融機関で翻訳を担当しているとのこと。なるほど、外国語学部の先輩なんだ!と思い、同じ外国語学部出身の私はすぐ井本さんと外国語の勉強について話し始めた。

 

まずはじめに、外国語学部出身者がよく聞かれる、「なぜ中国語を勉強しようと思ったか」という質問を投げかけてみた。この質問をした理由は、私の周りの日本人、特に女性は中国語に関心を示すことが少ないからである。井本さんは中学生の頃に地元で開催された日中友好交流のイベントに参加したことがきっかけで、中国に興味を持つようになり、また、外国語をマスターして海外に行ってみたいとも思っていたため、たまたま中国語を学ぶことになったと話してくれた。

 

「しかし、中国語はすごく奥深い!一つの意味に対していろんな言い方があるから、すべてを把握するのはなかなか難しい」。中国語を勉強する感想を聞いたら、井本さんはそう嘆いていた。中国語の学習方法に話が及ぶと、彼女は大学時代、中国語を向上させるために、中国語の学習CDを聞きながら何回も復唱して発音を練習していたそうで、普段は中国語のニュースや料理番組を見て、ヒアリング力を鍛えたりもしていると教えてくれた。

 

料理番組と聞いたら、もしかして井本さんも「グルメ」なのではないだろうかと内心期待してしまい、同じくグルメの私が池袋にある中華料理屋で食事をしようと誘ってみると、井本さんは喜んで賛成した。その後は、グルメ同士で料理の話をしつつ、一緒にワクワクしながら中華料理屋に向かった。道中、井本さんは中華料理について褒めちぎり、地方によってそれぞれ特色があるため、中国文化のなかで一番好きなのは食文化だと話してくれた。

 

「大連と上海に住んでいたので、中華料理で一番好きな食べ物は東北料理と上海の焼き小籠包」と笑って語ってくれた。あっという間に目的の中華料理屋に着いた。その料理店は私の実家(中国中部の河南省)の料理を主に提供しているため、私たちは河南名物である麺を注文した。最初、このコシが強い麺が井本さんの口に合うかどうか心配していたが、ラー油を足した羊のスープを飲み、汗を拭きながらおいしいという彼女の姿を見て、さすが中華料理の愛好家だなと感動した。

 

寒い日に暖かい麺を食べて最高だと思いつつ、私たちは池袋駅で別れた。私が「またね!」と言うと、「うん、またね!」と井本さんも言い返し、彼女の青色コートの姿が行き交う人々のなかに消えていった。

 

美食に国境はなし。中華料理がきっかけで井本さんと中国の食文化の間に縁ができたのだから、中華料理を食べながら人生を楽しみ、中国との縁が永遠に続いてほしい、それが私の井本さんへの期待である。