日中翻訳学院第16期公開セミナー

武吉先生の直接指導に約30人が聞き入る

東さん、重松さん、本田さんが貴重な翻訳体験を語る

 

武吉先生、段躍中撮影

 

 

【日本僑報社発】日本僑報社・日中翻訳学院は、翻訳家の武吉次朗先生が講師を務める中文和訳講座「武吉塾」の第16期公開セミナーを7月30日午後、東京・豊島区の区立生活産業プラザで開催した。

京都府、滋賀県、山形県など日本各地から駆けつけた受講生ら約30人が、武吉先生による直接指導に熱心に耳を傾けた。

 

セミナーではまず、武吉先生が「武吉塾」第16期(約4カ月・全15回)の課題文の添削を終えての講評を行った。

 

「(中国語)原文の理解力を高めるために」として、「翻訳にとりかかる前に、大声で3回音読」し、その上で「文脈から、内容を正しく把握する」こと、「(行政区画や地方政府など)中国に関する基礎知識が不可欠である」ことなど、中文和訳に当たる際の注意点をわかりやすく解説した。

 

また、誤字、脱字、変換ミス、文のつながり具合がおかしいといった「訳文の単純ミスを防ぐために」として、「訳文も原文同様、大声で音読すると、これらのミスを発見できる」などと翻訳の極意を伝授した。

 

続いて、このほど日本僑報社より刊行された『豊子がい児童文学全集第4巻 小さなぼくの日記』の訳者、東滋子さんが同書で2作目となった翻訳作品の感想を、また『中国人の価値観』の訳者、重松なほさんが先ごろ都内で開かれた同書刊行記念講演会の体験談を、さらに『新疆世界文化遺産図鑑』の訳者、本田朋子さんが同書で3作目となった翻訳作品の感想と、先ごろ都内で開かれた同書刊行記念講演会の体験談をそれぞれ披露した。

(※「豊子がい」の「がい」は、りっしんべんに「山」の下に「豆」)

 

このあとの懇親会では、受講生・修了生たちが現在取り組む中国書籍翻訳の進捗状況や近況などをそれぞれ報告。よりよい翻訳のノウハウについて講師や参加者たちが活発に意見交換するなど、有意義な“翻訳交流”を繰り広げた。

 

 

【公開セミナー】

東さん、重松さん、本田さんが貴重な翻訳体験を語る

 

【日本僑報社発】日本僑報社・日中翻訳学院は、翻訳家の武吉次朗先生が講師を務める中文和訳講座「武吉塾」の第16期公開セミナーを7月30日午後、東京都内で開催し、席上、講座受講生・修了生でこのほど翻訳書籍を刊行した東滋子さん、重松なほさん、本田朋子さんの3人がそれぞれ貴重な翻訳体験や講演会のもようを語った。

 

東滋子さんは、このほど日本僑報社より刊行された『豊子がい児童文学全集第4巻 小さなぼくの日記』が翻訳書籍の2作目となった。同書は、東さんにとって初めて挑んだ中国文学作品の翻訳となった。

翻訳の感想としては「1930年代を回想した作品ながら、今でいうイクメンにも劣らない、(子どもに対する)細やかな感性と愛情がたっぷりあふれている情景に驚かされた。同時に当時の封建的な社会に流されず、冷静に世の中を見つめる自由で哲学的な考えも随所に表れている」などと作品の魅力を紹介。

 

苦労した点としては「原文の味わいをそのまま生かすにはどうすればいいか」「想像力で構成しなおす部分が必要だった」などの具体例を挙げた。その上で、たばこの葉をキセルに詰めて吸う話では、当時のキセルを知らないため「ネットの写真を見たり、中国のかたに聞いたり」して、入念に確認作業を行ったという。

今回の翻訳全体を通しては「切れ味のある文章にするにはどうしたらいいか、原文の持ち味を損なわずに、その場の雰囲気をありのままに表現するにはどうすればいいか」について、まだ(正解の)ゴールが見えないと語り、「これは私にとって永遠の大きな課題」であると率直に明らかにした。

 

*『豊子がい児童文学全集第4巻 小さなぼくの日記』 豊子がい 著、東滋子 訳

http://duan.jp/item/192.html

* 東滋子さん 翻訳体験談(全文)

http://duan.jp/news/jp/20160802.htm

 

重松なほさんは、先ごろ都内の八重洲ブックセンター本店で開かれた自身の翻訳書『中国人の価値観』(日本僑報社刊)の刊行記念講演会について報告した。講演会は「答えはすべてここにある!」と題し、NHKの中国語講座でおなじみの陳淑梅先生に重松さんが疑問を投げかけるトークセッションの形で進められた。

重松さんにとって『中国人の価値観』は翻訳書籍の第1作となった。こうしたイベントに出席するにあたり「2つの思いがあった」と強調。

 

1つは「本が読まれない(時代だ)と言われる中で、中国と普段接点のない人に(本書は)手に取られにくいのではないかと思い、そのきっかけになればと思った」、2つは「本書は表紙はかわいらしいが、中身は学術的な内容でかたいため、その間を埋めるような紹介をしたかった」と明らかにした。

 

トークセッションは、同書の章立てに沿って中国の「経済価値観」「文化価値観」「社会価値観」などについて「このような価値観は本当にあるか?」陳先生に質問。先生のリアルな体験も交えて答えてもらう形で進められた。

重松さんは「写真や資料を使い、できるだけ身近なことを盛り込んで価値観とつなげるように考えた。幸い来ていただいた方には好評の声をいただいた」とイベントの工夫について振り返った。

また開催にあたっては、これまでに翻訳書籍を刊行した「武吉塾」の“先輩”からアドバイスをもらったほか、次に記念イベントを控えていた本田朋子さんに開催面でいろいろと協力するなど、受講生・修了生同士で活発な交流が行われたという。重松さんはそれを踏まえ「これから翻訳される方とも積極的に交流できれば」と期待を込めて語った。

 

*『中国人の価値観』 宇文利 著、重松なほ 訳

http://duan.jp/item/210.html

*『中国人の価値観』刊行記念陳淑梅先生×重松なほ氏トークイベント

http://duan.exblog.jp/23188187/

 

本田朋子さんは、先ごろ日本僑報社より刊行された『新疆世界文化遺産図鑑』(小島康誉・王衛東主編)が翻訳書籍の3作目となった。7月に都内の八重洲ブックセンター本店で開かれた、主編の小島康誉先生による同書刊行記念講演会のもようについて報告した。

 

講演会は前半が小島先生による講演、後半は本田さんが聞き手役となり、小島先生にさまざまな質問を投げる形で進められた。

 

「小島先生とは原稿のやり取りはしていたものの、当日は初対面だった。そのためお会いするまで少し緊張していたが、とても気さくで明るい方だったので、私の緊張もほぐれてきた」と本田さん。

後半の質問コーナーについては「事前に準備しておいた質問を先生に投げかけ、一つ一つ丁寧に答えていただいた。翻訳をしながら知りたかったことを直接お聞きすることができ、私にとっては有意義な時間となった。また、質疑応答時、来場者からの質問がつぎつぎと上がり、その内容もレベルが高く、読者の直接の声に触れることができ、大変勉強になった」と熱気あふれる講演会のもようを紹介した。

 

その上で、講演会の感想について「読者と顔と顔を合わせ、手元に本が届くところを直接見届けられる、著者とお会いできるチャンスという点で講演会では貴重な体験ができた。また今回の講演会後、八重洲ブックセンターのノンフィクション部門で(同書が)売り上げ第2位を記録したとのこと。これを機会に多くの方に書籍を手に取っていただけて、うれしく思う」と講演会開催の成果とその喜びを語っていた。

 

*『新疆世界文化遺産図鑑』 小島康誉・王衛東 主編、本田朋子 訳

http://duan.jp/item/209.html

* 小島康誉先生講演会を開催

http://duan.jp/news/jp/20160710.htm