日本僑報社

中曽根康弘元首相の『日中友好会館の歩み』推薦文を配信

 

 

 

7月4日、日本僑報社は中曽根康弘元首相の『日中友好会館の歩み』推薦文を配信した。『日中友好会館の歩み』は村上立躬前理事長の著書で、好評発売中だ。推薦文は以下の通りである。

 

日中友好会館の歩みをふりかえり

 

私が国会に議席を得て間もない頃、熱海に隠棲する徳富蘇峰のもとに通っては幾度となく話を聞いた。かつて、時代に大きな影響を与えたこの思想家がこれからの日本をどう考えているのかという強い思いに駆られてその指導を仰いだが、日本の今後の歩みの中で米国と共に中国の重要性を説かれたことが、今も私の心に強く残っている。

 

私の政治人生は、この碩学の言葉の重みを実感しながら日中関係の未来を見つめてきた歩みでもあったといえる。その後、松村謙三、高碕達之助両先達からは、執念にも似た中国との関係改善への取組を目の当たりにし、中国という国の奥深さと可能性の大きさを幾度となく教えられた。

 

そうした先人の努力の積み重ねの上に、後事を託された私達政治世代が日中国交正常化の責任を担うことになるわけで、果たしてそれは昭和48年の田中内閣で実現することとなった。残念ながら松村氏は日中国交回復を見届けることなく鬼籍の人となられたが、その遺志を継いで早くから中国に携わったのが古井喜実さんであった。

 

古井さんは松村氏の薫陶を受けられ、松村、高碕両先達の手足となって中国を訪問しては日中関係改善の地ならしに努められた。この日中友好会館は、大平内閣で日本側の総意として提案され、日中国交正常化10周年の際、訪中した古井さんに時の趙紫陽首相が強い支持を表明して創建されるに至ったものだ。それは、日中関係に心血を注がれた古井喜実さんを初めとする関係者の思いを具体化すると同時に、中国との関係改善に政治人生を捧げた松村、高碕両先達をはじめとする諸先輩の遺徳を偲び、その精神を次代へと引き継ぐものである。

 

日中友好会館は日中関係の団体の中で唯一施設を保有する。日中双方の役職員が協力して運営にあたる特別な存在でもある。長きに渡り、青少年交流や文化交流に取組み、多様な活動を通じて両国の友好親善に貢献することで日中両国から高く評価されてきた。古井さんの引退後は、その志を受け継いだ後藤田正晴氏が一層の事業充実発展に努力され、林義郎、江田五月氏に引き継がれ今日に至っている。

 

ひと昔前の中国を考えれば、今や伸長著しくその発展は目覚ましい。シルクロードを通じて多くの文物文化が伝播した日本と中国はやはり最も重要な関係にある。これからも、互いが友好の絆を深め、アジアと世界の平和と繁栄のために協力し合いながら貢献していくことで日中両国関係のさらなる発展を願って止まない。

 

今回、様々な歴史と共に日中友好会館が果たしてきた役割と成果を記録として残すために一冊の本に纏められるということで、公益財団法人日中友好会館の村上立躬顧問がその実務の責任を務められた。幾世代の重なりの中で育まれてきた日中民間交流の歴史を記すことで、先人の努力とその意義を日中関係の大きな可能性とともに後世に伝える上で誠に貴重な資料となる。改めて、その労に感謝と敬意を表し日中友好会館の益々の発展繁栄をお祈りしたい。