著名な外交家、『中国式コミュニケーション

の処方箋』共著者の呉建民氏追悼

 

右が呉建民氏。

 

 

【日本僑報社発】中国メディアによると、中国の元駐フランス大使、元外交学院長で、著名な外交専門家の呉建民氏が6月18日、中国内陸部の湖北省武漢で交通事故に遭い、死去した。77歳。

 

1959年、北京外国語学院を卒業後、中国外務省に入省。毛沢東や周恩来の仏語通訳を務めた後、同省報道局長、駐オランダ大使、駐フランス大使などを歴任。2003〜08年に外交学院長。国政助言機関、全国政治協商会議の副秘書長や外務省の外交政策諮問委員も務めた。

 

著書に『我与世博有縁』(私と万博とのつながり)、『在法国的外交生涯』(フランスにおける外交人生)、『我的中国夢:呉建民口述実録』(私のチャイナドリーム:呉建民口述記録)などがある。

 

また日本語版に、趙啓正氏(中国人民大学新聞学院院長、元中国国務院新聞弁公室主任)との共著『中国式コミュニケーションの処方箋』(日本僑報社)がある。

 

―・―・―・―・―・―・―・―・

 

日本僑報社の段躍中編集長は、中国メディア「中国新聞」(6月20日付)のインタビューに答え、「18日に(知人の)香港の記者から“微信”(ウィーチャット、中国のSNS)でこの訃報を受けた時、作り話かと思いました。あの学識が高く、熱心で、英知にあふれた方が突然死去されたとは信じがたい」と語った。

その後、段編集長は微信などを通じ、呉建民氏が昨年来日した際に同社のために揮毫した姿をとらえた写真を発信し、哀悼の意を示した。

 

日本僑報社は昨年、呉建民氏の著書の日本語版『中国式コミュニケーションの処方箋』を出版したこともあり、呉氏との関係は非常に深い。

 

昨年7月、呉氏が日中関係シンポジウムに出席するため来日した際、段躍中編集長の妻で日本僑報社の段景子社長は、刷り上ったばかりの『中国式コミュニケーションの処方箋』を呉氏に進呈した。

 

段景子社長は、その際に呉氏が日本僑報社に対し「中日交流の最前線にあって、中国の声を日本に伝え、日本の声を中国に伝えている」と同社を高く評価したことが忘れられないという。

 

また呉氏はその場で「中国の外交思想を日本の人たちに知ってほしい」と語り、帰国後すぐに自身の著書で意欲作の『外交案例』(外交実例)をEMS(国際スピード郵便)で送り届けてくれた。段景子社長は「彼はじつに約束を守る人で、いつも理想を抱いていました。同書の日本語版の出版で、日本をはじめ世界の人々に中国を理解してもらいたかったのです」と振り返る。

 

段躍中編集長は6月19日に『毎日新聞』『東京新聞』『日本経済新聞』、共同通信社など日本の大手メディアのほとんどが呉建民氏の訃報を掲載、発信したことに対し、「1人の中国人外交官の死去が、このように多くの日本メディアの関心を集めるのは珍しい」と語る。

 

また昨年8月、北京で開催した『中国式コミュニケーションの処方箋』日本語版の出版記念・記者発表の席で、呉氏と趙啓正氏が多くの日本人記者に囲まれ、親しく話していた姿を覚えている。

 

「印象深いのは、彼の中日関係への見方がきわめて見識の高かったこと。彼は『中日友好は歴史の趨勢であり、民間交流は非常に重要だ』と認識していました」と段編集長は語る。

 

日本では大手メディアのみならず、フェイスブックやツイッターなどのSNSでも呉建民氏の死を悼む声が多く見られた。

 

段編集長は、呉氏の外交理念をこう総括できるという。

 

「平和と発展がこんにちの世界の主流である。拡張せず、覇を唱えず、同盟を結ばないというのが、中国の外交政策の核心であり理性的な選択である」

 

その上で段編集長は、「彼の思想は中国国内のみならず、世界にとっても必要なもの。平和とウインウイン(共存共栄)の理念は、覆すことのできない世界の潮流で、人類がともに推進すべきものです」と強調する。

 

さらに段編集長は、日本僑報社が『外交案例』を日本で翻訳出版する計画を明らかにしたほか、6月22日配信のメールマガジン「日本僑報電子週刊」で呉建民氏を追悼し、その生涯の功績をたたえたいと強く語った。

 

(中国新聞網6月20日付「旅日華人出版家眼中的呉建民:儒雅睿智有胸懐」、日本僑報社編集翻訳)