北京大学の尚会鵬教授著

『日中心理文化比較論』が刊行決定

 

尚会鵬先生(左)と谷中信一先生。段躍中撮影

 

 

【日本僑報社発】日本僑報社は3月29日、北京大学の尚会鵬教授の著作『日中心理文化比較論―日中の文化を心理的側面から比較する―』(仮題)を刊行することを決定した。

 

原題は『中国人与日本人社会集団・行為法式与文化心理的研究』。翻訳は、日本女子大学の谷中信一教授(文学部)が担当された。

 

本書によれば、これまで中国の学者の「日本」研究は、主に政治的な関心に注がれるばかりで、人文科学の方面から(学術的に)研究されることはなかった。

 

こうした中で、本書は「社会人類学の基本理念を核として、比較文化の研究方法を取り入れ、中日両民族の深層における文化的特徴を明らかにすること」を目的とした、全く新しい「日中心理文化比較論」となった。

 

それは、社会学の通り一遍の通説から抜け出して、社会人類学的理念を中日両文化観察の視点に据え、広範な文化現象の中から、「家」・「親族」・「家元組織」・「宗教信仰」・「性意識」等に着目し、その文化的特徴をよく示す本質的な部分を取り出して論じている。

例えば、日本と中国の「集団意識」と「家庭意識」、「上下意識」と「平等意識」、「島国意識」と「中華意識」、「名誉(メンツ)の意識」と「恥の意識」といった違いを指摘。こうした各問題についての結論は、中国ではこれまで誰も言及してこなかったとされ、原書の発表後、国内で大きな注目を集めたという。

 

序文を寄せた、北京大学の厳紹璗教授は「著者の研究方法は極めてはっきりしており、文化人類学と社会人類学の理論もよく把握している。つまり著者は豊富な中日両国の文献を渉猟しており、彼自身の考え方を広げるための相当豊富な基礎的知識も備えている。また著者はすぐれた英文読解能力を持ち英語圏に留学した経験もある。(中略)本書の作者はそれらから学術研究上の経験を積んできただけに、研究の厳格な方法論に多大な注意を払っていることがわかる。これこそまさしくわれわれに欠けている点である」と最大の賛辞を贈る。

 

日本文化研究と中日比較文化研究の分野において、中国第一線の学者が論じた「日中心理文化比較論」。

 

学術的価値が高く、かつ文化比較の“新視点”がうかがえる著作として、文化研究に携わる学者や学生、また中国と日本の比較文化に関心のある一般読者にとっても、価値のある一冊となっている。