趙啓光著『無為無不為』日本語版の刊行決定!

兄の趙啓正氏が序を寄せる

 

 

 

日本僑報社がこのほど発表したところによると、米カールトンカレッジ終身教授(アジア言語文学部)の趙啓光氏が著した『無為無不為』の日本語版が、2016年3月に同社から刊行されることが決定した。日本語版の刊行は昨年3月、不幸にもマイアミの海で遭難した趙氏の一周忌を記念するものとなる。

日本語版には、著者の兄で、元中国国務院新聞弁公室主任の趙啓正氏が、特別に「序」を寄せている。

 

『無為無不為』日本語版のタイトル(仮題)は、『現代人のためのタオイズム的生活のススメ――カールトンカレッジの講義ノートから』。

原著は、趙啓光氏が長年カールトンカレッジで行なった老子の哲学に関する講義をもとに執筆された。趙氏は長年にわたり、中国伝統文化や中国哲学、比較文学、国際文化交流、国際政治情勢などの分野を深く研究し、なかでも古代中国の哲学者、老子の哲学研究に造詣が深い。

 

趙氏は本書の「はじめに」で、このように記している。

「何もしないこと(無為)とすべてを為すこと(無不為)は人生という航路を進むための両翼である。人生いつも抵抗ばかりしていては窮屈だ。人が人生において努力すべきは無為と無不為の実現であって抵抗だけではないと思う。……無為と無不為のあいだを遮(さえぎ)るものはない。悩んだり迷ったりすることなく、無為と無不為を軽やかに行き交えば我々は自由になれる」

趙氏は本書でユーモアを交えながら、「何もしないこと(無為)」と「すべてを為すこと(無不為)」における弁証法的な統一の関係をわかりやすく解説している。

 

本書の原版は、2009年に英語版としてアメリカで出版された。その後、中国の海豚出版社が「趙啓光作品シリーズ」(全10巻)の1冊として中国語版を出版し、中国でも広く親しまれることとなった。中国の読者にとって、本書が伝える「外国語の世界から自らの文化を見る」という視点は新鮮で、伝統文化に対する見直しにつながったといわれる。

 

日本語版刊行に際し、著者の兄で、元中国国務院新聞弁公室主任の趙啓正氏が「序」を寄せており、「現代中国語で解説するのも難しい老子の思想を、弟は英語で徹底的に解説し、あわせて外国の学生が楽しんで学べるよう、みずから描いた挿絵を用いて理解の助けとした」と紹介。広く受け入れられやすい方法で中国の伝統文化を解説した本書日本語版について、趙啓正氏は「日本の読者に気に入ってもらえれば」と期待感を示している。

 

趙啓光氏は1948年3月14日、北京生まれ。1981年、中国社会科学院大学院で英米文学修士号を、また1987年には米マサチューセッツ大学で比較文学博士号をそれぞれ取得。さらに、米カールトンカレッジに終身教授として招聘され就任した。ほかに中国国家外国専家局の2010年度「重要誘致専門家」、また同済大学特別招聘教授などを歴任した。

 

教授を務めた20年余りの間には、アメリカ人学生の訪中学習クラスを十数回にわたり実施、積極的に中国伝統文化を教え、彼らの中国理解を促進した。また教育、出版、テレビなどのルートによって中国伝統文明や現代文化を伝えたほか、ネットメディアなどにより中華文化と国際政治、国際交流などの討論を広く伝えた。趙氏は「世界に中国を解説し、中国に世界を解説する」という二重の責任を担い、大きな影響力を持っていた。

 

著書に『天下之龍』『古道新理』『21世紀是中国世紀嗎』など中国語版、英語版が各十数点あり、内外の新聞雑誌掲載文は数百本に上る。また内外テレビのゲストスピーカーを多く務めた。

 

2015年3月14日、マイアミの海で遊泳中、不幸にも激流に巻き込まれて遭難。67歳だった。同年末、趙啓光教授は、ミネソタ州の『スタートリビューン』紙で「北極オーロラの星」と評価された。

 

日本語版の翻訳は、日中翻訳学院武吉塾、翻訳者養成スクールISS本科で中国語翻訳を学んだ町田晶さんが担当した。