日中経済発信力プロジェクトの講演会

「日中首脳会談後の日中経済」北京で開催

 

 

報告する執筆者メンバーたち。

 

『日中関係は本当に最悪なのか』表紙

 

 

日本僑報社刊『日中関係は本当に最悪なのか―政治対立下の経済発信力』の編者・執筆者メンバーの組織「日中経済発信力プロジェクト」と北京日本人学術交流会の共催による講演会「日中首脳会談後の日中経済」が1月24日、中国の北京日本文化センターで行われ、日系企業関係者や日本語を学ぶ中国人学生ら約80人が参加した。

 

高島竜佑・日本大使館経済公使と西村友作・対外経済貿易大学副教授の基調講演に続き、執筆者メンバーからDNP(上海)の伊東千尋氏、環境ビジネスの佐野史明氏が現場からの報告をした。

また、NEDOの田中英治氏は12月末、北京で開かれた「第8回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が日中関係者の強い熱意によって支えられたことを紹介した。

三菱商事の小山雅久氏からは、日本人の中国認識について潜在的に偏見、先入観があるとの貴重な問題提起があった。司会はライターの斎藤淳子氏が担当した。

 

講演ではまず高島氏が、日中経済関係を概説し、日本の対中投資は減っているものの国別ではシンガポールに次ぐ第2位で6.0%を占めていること(2013年)、製造業の投資は一巡した感があるが、介護・医療といったサービス業や、ロボット業界をはじめとする新分野では中国ビジネスで大きなチャンスをつかんでいること、などの指摘があった。

西村氏からは中国の経済改革について「経済構造を根本的に立て直し、筋肉質な経済構造に鍛え上げていく必要」との提言があり、中国の地方出身学生が北京の不動産高騰で地方回帰を強めていることなどのエピソードにも言及があった。

 

伊東氏は日中間のパーセプションギャップを埋めるためには、小さな成功例を積み上げながら日本で中国を理解する人(=「資源」)を増やしていくことが大切であることを、自身の経験をもとに熱く語った。

佐野氏は中国ビジネスにおける「スピード」と「実践」の大切さを強調し、中国社会に特有なコネだけではもはや不十分で、コネは当然のこととして、その上で、市場で勝ち残る競争力が問われているとの率直な現場報告があった。

 

 参加者からは、コンプライアンスについての認識の違いや知的財産保護のあり方、さらには「訪日観光の増加は、香港や台湾などのように、逆に摩擦を深めるのではないか」「日系企業は欧米に比べ賃金が低く、昇進の道も閉ざされている」などの質問や問題提起があった。

 

講演会は3時間半という限られた時間ではあったが、参加者からは「それぞれの立場から率直な意見を交換し、有意義な交流の場になった」との声が聞かれた。

日中経済発信力プロジェクトとしては、北京では次回、春節後の3月をめどに若者に焦点を当てた講演交流会を開催する予定。また上海でも地元の学生団体らとの交流イベントの企画を進めている。

 

※『日中関係は本当に最悪なのか―政治対立下の経済発信力』

http://duan.jp/item/172.html