中国の人気ドラマ原作『新結婚時代』日本僑報社より刊行

『新結婚時代』の広報チラシ

91歳の共訳者加納氏。段躍中撮影

 

 

 中国の人気女性作家、王海鴒(おう・かいれい)のベストセラー小説で、テレビドラマ化されて人気を博した『新結婚時代』の邦訳が日本僑報社から刊行され、すでに原作やドラマを楽しんでいた日本人ファンらに注目されている。書籍は7月末から発売され、amazonなどネット書店でも売れ行き好調だ。

 王海鴒には本作『新結婚時代』のほか、『牽手』『中国式離婚』など多数の話題作があり、不倫・離婚をはじめ、結婚にまつわるテーマを巧みに描く作家として中国で高い人気を誇る。本書のなかで、著者が自らの義母の言葉を借りて記したというセリフに「二人が結ばれるということは、二つの家族が結ばれるということ」がある。王海鴒の作品には、中国社会ならではの濃密な人間関係の絆やしがらみが随所に描かれている。この『新結婚時代』でも、主人公となる若い夫婦のそれぞれの実家と親戚、友人、職場の上司・同僚など、多数の登場人物のかけひきや心理描写が織り込まれる。それでいて、読者を飽きさせない軽快なストーリー展開を得意とする王海鴒の手腕が、存分に発揮されているのが魅力だ。

 物語の舞台は、北京。北京で生まれ育った文芸編集者の妻と、農村で生まれ育ち、北京の大学を出たエリートエンジニアの夫。それぞれの実家の親兄弟との確執。妻の親友と実業家の不倫の恋愛。さらに、妻の母親の突然の死から、老齢の父親と若い家政婦との再婚話まで持ち上がる。一つの家族の周辺に様々な結婚・恋愛のタイプが提示され、読者にも「結婚とは何か、恋愛の形とは」を考えさせずにはいない。

 また、夫婦の育った環境による価値観の隔たりや、現代中国のかかえる都市・農村間の格差、都会での貧富の格差などの問題もさりげなく描かれており、今の中国の人々の生活に根ざした作品である。それゆえに、等身大の物語として中国の読者に広く親しまれたのではないだろうか。日本人が中国を理解するためにも最適な読み物と言える。

 本書の訳者の一人、陳建遠(ちん・けんえん)さんは、北京生まれで日本在住歴22年の主婦。もともと王海鴒の作品のファンだったが、北京に帰省した際に本書に出会い、翻訳を思い立った。「人間関係の心理描写の鋭利・精緻さは、現代作家の中でも抜群。彼女の本が日本の方々にも読まれ、中国のことを一層わかっていただきたい」と本書の「あとがき」で語る。共訳者の加納安實(かのう・やすみ)氏とは日本語教室を通して知り合った。元朝日新聞記者の加納氏が陳さんの訳文に磨きをかけ、洒脱でテンポのよい日本語に仕上がった。

 本書の日本語版には、原作者である王海鴒も序文を寄せている。出版元の日本僑報社では、ベストセラー作家・王海鴒の作品が、新たな日本の読者を獲得できるかどうか、期待をこめて見守っている。