余録:「中国青年報」の記者だった・・・

毎日新聞 20130603

 

「中国青年報」の記者だった段躍中(だんやくちゅう)さん(55)が、留学した妻を追っかけて来日したのが1991年8月だった。天安門事件から2年後。「ジャーナリストとして日本を見たらどうか」という妻の一言に誘われてのことだった

 

▲当初は驚きの連続だった。電話ボックスに旅券や財布を入れたバッグを置き忘れ、あわてて戻ったら盗まれもせずそのままあったこと、日本のメディアが堂々と政治家を批判、風刺すること。一方で、外国人の犯罪についてことさら悪い面を強調する姿勢も気になった

 

▲それから22年。ひたすら日中交流強化に励んできた。在日中国人の活動を紹介する情報誌を発刊、日中関係の書籍も約240冊出版した。2005年からは年1回中国人学生らに日本語で作文を書いてもらうコンクールを実施、街角の公園を使った日中交流会も300回を数えた

 

▲その段さんの目にも、今の日中関係は厳しく映る。政治交流の中断、停滞だけでない。中国では、中国版ツイッターでの日本批判が増え、日本留学希望者は親から反対されるし、日本では中国語を学ぶ学生が減り反中国意識が強くなった

 

▲「それでも」と段さんは先日、日本記者クラブの会見で関係改善のためのアイデアを披露した。いわく。約60万人の在日中国人への支援を強化して彼らを民間大使として活用する。日本の良さをもっと発信するため、影響力のある中国人ブロガーを日本に招待する

 

▲やるべきことはまだまだある、ということか。段さんに負けずに私たちも「それでも」との声を上げたい。いっそのこと、日中の懸け橋コンクールというのはどうだろうか。