7回中国人の日本語作文コンクール最優秀賞(日本大使賞)受賞作品

王君の「頑張れ日本」

胡万程(国際関係学院)

丹羽大使と胡万程さん。段躍中撮影

 

東北大震災発生後、僕は中国の大学生が集うBBSにこう書き込んだ。「頑張れ日本、災害に負けるな。一日も早い復興を」すると、友人からも次々に書き込みがあった。「日本人の精神を信じる。頑張れ!」「援助隊を日本に派遣!」「募金をしよう。」

そこへいきなりこんな書き込みが入ってきた。

「ざまみろ。マグニチュード一〇の地震が東京で起きていたら、もっとよかったのに」。

ショックだった。コメントしたのは、高校時代の同級生王君。彼は「鯨青(民族意識が強い若者)」というあだ名で、「許噬戯事件」の時も反日デモに参加したという人物だ。僕はすぐに返事をした。「なんてひどいことを…、日本のことがそんなに嫌いか」。他の友人も反論した。「それでも人間か」「最低だ、同じ中国人として恥ずかしい」「根性が悪い」。王君も負けずとコメントを返す。「嫌い?そんな生易しいものか、恨んでる。祖父は日本鬼子に殺された!日本は敵だ。この恨み一生忘れない。」びっくりした。王君が日本を嫌っていたわけだ。

僕は王君にコメントを返した。「そうか、君の気持ちはわかった。確かに日本は中国を侵略した。僕の祖父の工場も日本軍に潰されたんだ。でも、考えてみてほしい。それは日本軍がしたことで日本国民ではない。それに、日本は災害で死者が二万人を超えるかもしれない。中国は隣国として、日本を援助すべきじゃないか」。王君はこう返してきた。「二万人?たった二万人じゃないか!南京大虐殺の死者は三十万人!しかも、虐殺されたんだ!」僕は返事に詰った。

王君の反撃は続く。「侵略戦争のことは、まあいい。三月十日雲南省にも地震があった。なぜ、雲南の被災者に対してコメントしない?雲南はどうでもいいのか。お前は日本の犬だ」。王君のコメントはすでに罵倒だった。僕はそこでBBSを打ち切った。

その後、僕は中国のネットで日本大震災についてのコメントを検索した。日本に対するエールがほとんどだ。しかし、悪意に満ちたコメントもわずかにある。どうして、こんなひどいことが書けるんだろう。

僕は悪意のあるコメントを何度も読み返した。そして、気がついた。そうか、この人たちは日本について、侵略戦争のことくらいしか知らないんだ。だから、災害が自分のこととして思えないんだ。王君もひょっとして、日本について知らないからあんなこと言ったんじゃないか。僕が王君の考え方を変えられないか。

その日の夜、王君に心を込めてメールを書いた。東北大震災について、站川地震の時の日本救援隊について、中日関係について、そして、写真や映像を添えて発信した。

返事はなかった。このことを忘れかけたころ、ようやく王君からメールが返ってきた。

「全部見たよ。ショックだった。家屋の残骸、火災、川に浮かぶ車、両親を失った子供の顔、助けを待つ老人。悲しかった。送ってくれた映像で津波を初めて見た。本当に一瞬で、木、車、家、全部が水没。声も出なかった。人は弱いものだな。それに站川地震の時、日本救援隊が一番早く災害地に来てくれ、日本の義捐金額は第二位だったのか。知らなかったよ。この前はひどいことを言ってごめん。僕は、祖父のことは忘れられない…だけど、日本について教えてくれてありがとう。」

BBSにも王君はコメントを書きこんでいた。

「再び、中日戦争が起きたら俺は銃をとって最前線で闘う。しかし、もし日本が再び災難に遭ったら、担架をかついで、被災地の最前線で日本人を救う。頑張れ日本!」

ようやく、王君も「頑張れ日本」と言ってくれた。感動した!僕は、実際、被災した人を助けることはできなかった。しかし、小さな小さな「頑張れ日本」の行動ができた。中国の青年の一人として、僕は心から周りの人たちとともに中日にとって役に立つことをしたい。寄付も、エールを送ることも、友達の見方を変えることも。僕は僕にできる日本救援をする。

頑張れ、日本!

 

(日本僑報社『甦る日本 ! 今こそ示す日本の底力』より転載)