第九回
中国人の日本語作文コンクール
開催報告と謝辞
日本僑報社・日中交流研究所 所長 段 躍中
日本僑報社の「中国人の日本語作文コンクール」は、今年で九年目を迎えました。この度、第九回「中国人の日本語作文コンクール」が無事開催できましたのは、応募者の皆さんをはじめ、関係者の皆様のご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。
今、政治的な問題で日中関係は厳しい局面にあり、応募者の減少が心配されましたが、なんと一六六校(大学、専門学校、高校、中学校)から二九三八作の応募がありました。応募いただいた皆様に感謝いたしますと共に、各校で指導された先生方に厚く御礼申し上げます。
今回のテーマは「中国人が語る、日本にまつわる感動」と「日本人が語る、中国にまつわる感動」。いずれの作品も、自身の経験や親類、友人などから聞いた話まで、『中国と日本にまつわる感動エピソード』が、一般的な中国人学生の目を通して生き生きと描かれていました。
日本との間で次々と難題が発生している現在、中国に居ながら日本語を勉強しているという、ある意味、難しい立場の彼らは、周囲の人々の目を気にしつつも、日本の良いところを認め、素直に感動してくれています。
今後の両国の架け橋ともなってくれるであろう学生たちの素晴らしい作文をどうぞご堪能ください。
■審査の経過■
【一次審査】
第一次審査は、日中交流研究所の母体である日本僑報社編集部内で行いました。
審査開始前に、応募要項の規定文字数に満たない、あるいは超過している作品を審査対象外としました。次に、審査対象作品を査読員とボランティアの方で読み、日本語の文章力五十点、内容五十点で採点しました。
【二次審査】
今年は次の十四名の先生方が協力してくださいました。(敬称略・五十音順)
五十嵐貞一 (中国留学生交流支援立志会 理事長)
岩楯敞広 (首都大学東京 名誉教授)
岩楯嘉之 (NPO法人日中交流支援機構 事務局長)
川村恒明 (財団法人神奈川芸術文化財団 顧問)
小林治平 (日中交流研究所 研究員)
杉山直隆 (ジャーナリスト 朝日新聞記者OB)
関 史江 (東京大学大学院工学系研究科 技術アドバイザー)
谷川栄子 (日本大学国際関係学部 非常勤講師)
塚越 誠 (書家、日中文化交流の会 日本代表)
塚本慶一 (杏林大学教授)
山中正和 (公益財団法人日本中国国際教育交流協会 常務理事)
瀬野清水 (前重慶総領事)
和田 宏 (神奈川県日中友好協会会員、元NHK)
坂本安廣 (中国人の日本語作文コンクール事務局ボランティア)
公平を期するため、二次審査では応募者氏名と大学名は伏せ、受付番号のみがついた対象作文を先生方に配布しました。
本年も審査は難航いたしましたが、二次審査にて上位入賞作文が決定しました。審査下さった先生方に心から感謝申し上げます。
【三次審査】
二次審査で得点の高かった学生に、国際電話にて口述審査を行いました。口述審査で得た点数と第二次審査の合計点数を合算して、最優秀賞候補者と一等賞候補者五名を選出しました。
【最終審査】
第三次審査で選出した最優秀賞候補者と一等賞候補者六名の作品を北京にある日本大使館に送り、大使ご自身による最終審査の末、日本大使賞受賞者を決定していただきました。あらためてお礼申し上げます。
■賞について
審査に基づき、応募者の中から百十一名に賞を授与いたしました。内訳は、最優秀・日本大使賞一名、一等五名、二等十五名、三等四十名、佳作五十名です。
■園丁賞
学生たちの日本語力向上は、指導教官なくしてはありえません。そのため、日中国交正常化三十五周年にあたる第三回コンクールから、学生の作文指導に実績のある日本語教師を表彰する「園丁賞(第三回の園丁奨より改称)」を創設しました。
応募いただいた一六六校の中から、五十作以上の団体応募をいただいた学校に賞状を授与しました。また記念品として、日本僑報社発行の書籍を贈呈しました。書籍は、もっとも応募作の多かった学校には二十五万円分相当、百作以上の応募があった学校には十万円分相当、五十作以上の応募があった学校には五万円分相当をお送りしました。
日本語を学ぶ学生たちのために活用していただければ幸いです。
受賞校は、次の通りです。( )内は応募数。
浙江万里学院(一九九)、上海海洋大学(一五二)、大連大学日本言語文化学院(一四五)、湖州師範学院(一三四)、大連東軟信息学院(一三二)、青島大学(一一四)、中南財経政法大学(一〇六)、湖南農業大学外国語学院(九九)、長春工業大学(九七)、吉林華橋外国語学院(九四)、長春理工大学(八八)、浙江農林大学(八五)、山東交通学院(八四)、華僑大学(七七)、上海師範大学天華学院(七三)、黒竜江大学(七一)、五邑大学(五八)、山東大学(威海)翻訳学院(五三)、江西財経大学(五三)、四川外語学院成都学院(五一)、山西大学(五一)、浙江大学寧波理工学院(五〇)、遼寧大学(五〇)。
おめでとうございます。
■今年の特徴と感想■
「中国人の日本語作文コンクール」が今年で九回目を迎えることができ、非常に嬉しく思っています。今回は一六六校から二九三八作が寄せられ、五十作以上の団体応募をしてくださった学校が二十三校あり、さらにそのうち七校は百作以上もの作品をお送りくださいました。このことは、応募者はもとより指導に当たられた先生方の当コンクールに対する熱意とご協力の賜物と厚く御礼申し上げます。
常に何かしらのわだかまりが存在する日中両国間において、昨年激化した領土問題を発端とする関係の冷え込みは、日中国交正常化後、最悪の状態とまで言われています。しかし、そのような状況においても、両国間の交流を絶やすまいと努力する人たちは少なからず存在します。そこで、両国民の心をつなぐものは何かと考えたとき、今回のテーマ「感動」に辿り着きました。
学生たちから寄せられた作文には、学生自身や家族、友人など周りの人が経験した「中国人が語る、日本にまつわる感動」と、日本人教官や日本からの留学生などから聞いた「日本人が語る、中国にまつわる感動」とが描かれていました。
中でも、「中国人が語る、日本にまつわる感動」には、若者らしく、日本のアニメや映画などのいわゆるサブカルチャーから受けた感動、または、一番身近な日本人である担当教官や、旅行、研修などで日本を訪れた際に触れ合った日本人から直接受けた感動を描いたものが多く、コンクールの日本人審査員からは、「応募作を読み、日本の文化や日本人を見直した」という声も寄せられました。
毎回実感させられるのは、中国で日本語を学習する若者たちの日本語能力の高さと熱心さです。
今年の応募作の中にも、甲乙つけがたい力作が数多くあり、学生たちが日々の勉強の合間を縫って一所懸命綴ってくれたことが容易に想像できましたが、コンクールという体裁上、優劣を付けざるを得ないということが大変心苦しかったです。
最後に、今回も残念ながら文字数の規定(一五〇〇〜一六〇〇字)から大きく外れている作品が多数寄せられていました。しかしそれらにも、内容的に素晴らしいものがたくさんありました。恐らく、作者は苦労の末にまとめたものの、どうしても規定範囲内に収められなかったのであろうと思いますが、規定文字数を超える作品は残念ながら受賞対象外となってしまいます。今後応募される際には、内容の次に規定文字数以内で書きあげることを念頭に置いて取り組んでいただきたいと思います。
■本書の刊行経過■
日中交流研究所は、二〇〇五年から日中作文コンクールを主催し、第一回から作文集を刊行して参りました。今回で九冊目となります。第一回からのタイトルは順に、『日中友好への提言』、『壁を取り除きたい』、『国という枠を越えて』、『私の知っている日本人』、『中国への日本人の貢献』、『メイドインジャパンと中国人の生活』、『甦る日本!
今こそ示す日本の底力』、『中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?』で、これら八冊の作文集は多くの方々からご好評を賜っております。このうち、特に『壁を取り除きたい』は、二〇〇六年度の朝日新聞書評委員の推薦図書にも推薦いただいたほか、『中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?』は、読売新聞とサンデー毎日にて大きく取り上げられました。(二一四頁に掲載) ありがとうございます。
在中国日本大使館には第一回から後援していただいておりますが、第四回からはさらに日本大使賞を設け、当時の大使であった宮本雄二氏と丹羽宇一郎氏および現職の木寺昌人大使には、ご多忙にも関わらず自ら大使賞の審査をしていただきました。ここであらためて、宮本氏と丹羽氏、木寺大使をはじめ、大使館関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
また、第二回からご支援いただいている日本財団笹川陽平会長と尾形武寿理事長の本活動へのご理解と変わらぬご支持に御礼を申し上げます。
そして、宮本雄二氏と石川好先生のお陰で、第七回より協賛いただくことになった株式会社ドン・キホーテ代表取締役会長、財団法人安田奨学財団理事長安田隆夫氏には、奨学金制度の設立など多大なご支援を賜り、中国の学生たちの日本語学習の励みとなることと、心より感謝申し上げます。
なお、本書に掲載しました作文は、最低限の校正しか行わず、日本語として不自然な部分が多少あっても、学生の努力の跡が見えるものと考え、そのまま残しております。ご了承ください。
最後に、今回本書のタイトルにある「日本力」は、高村正彦(自民党副総裁)先生が揮毫下さいました。ここに御礼申し上げます。
■謝辞■
本コンクールの開催及び本書を出版するにあたり、いつも多くのお力添えをくださいます各団体、個人の皆様へ心より感謝の意を表します。
【協 賛】 株式会社ドン・キホーテ、朝日新聞社、東芝国際交流財団
【協 力】 日中文化交流センター、中国留学生交流支援立志会、財団法人日本中国国際教育交流協会、NPO法人日中交流支援機構、日本湖南人会
【後 援】 在中国日本国大使館、人民日報社人民網、日中友好会館、日中文化交流協会、日中友好議員連盟、日中友好協会、日中協会、日本国際貿易促進協会、日中経済協会、中国日語教学研究会、中国中日関係史学会、中国日本友好協会、財団法人霞山会
また、ご協力いただきながらも、失礼ながら今回お名前を挙げることができませんでした多くの先生方へも、この場を持ちましてお礼の言葉とさせていただきます。 二〇一三年月十一月吉日
(日本僑報社『中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?』より転載)
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