第七回

中国人の日本語作文コンクール

開催報告と謝辞

 

日本僑報社・日中交流研究所 所長 段 躍中

 

 

日本僑報社の「中国人の日本語作文コンクール」は、今年で七年目を迎えました。この度、第七回「中国人の日本語作文コンクール」が無事開催できましたのは、応募者の皆さんをはじめ、関係者の皆様のご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。

今回より社会人の部がなくなり、募集は学生の部のみと致しましたが、なんと一七一校(大学、専門学校、高校、中学校)から三一二七編の応募があり、過去最多を更新致しました。

応募いただいた皆様に感謝いたしますと共に、各学校の指導された先生方に厚く御礼申し上げます。

今回のテーマは、「日本企業に伝えたい中国人消費者の本音」と、三月の震災をうけ追加された「頑張れ!日本!」の二つ。被災した皆さんへの温かい励まし、応援のメッセージが沢山とどきました。また、中国に住む一般的な中国人学生の目線から、中国で商売する為に欠かせないこと等、アイディア満載の作文にも注目してください。

相変わらず摩擦の絶えない日中関係…そんな国家間の問題が霞むほど、「人」として繋がっていこうと前進している、たくましい学生達の素晴らしい作文をどうぞご堪能ください。

 

■審査の経過■

【一次審査】

第一次審査は、日中交流研究所の母体である日本僑報社編集部内で行いました。

審査開始前に、応募要項の規定文字数に満たない、あるいは超過している作品を審査対象外としました。次に、審査対象作品を査読員とボランティアの方が一作品につき、二名以上読み、日本語の文章力五十点、内容五十点で採点しました。そして、二名共に高得点を付けた作品をまず入賞候補とし、どちらか一名が高得点を付けた作品は再度読み合わせをし、複数回にわたって審議した上で入賞候補作品を決定しました。

第一次審査過程において、横井幸雄氏、佐分利安秀氏、岩楯敞広氏、杉山直隆氏、伊藤遙氏、鈴木百合子氏、田中久実氏、塚本睦子氏、岩楯嘉之氏、辻田亜紀子氏(順不同)にもご協力頂きました。あわせてお礼申し上げます。

【二次審査】

今年は次の十一名の先生方が協力してくださいました(敬称略・五十音順)。

五十嵐貞一  (中国留学生交流支援立志会 理事長)

岩楯敞広    (首都大学東京 名誉教授)

岩楯嘉之    (NPO法人日中交流支援機構 事務局長)

川村恒明    (財団法人神奈川芸術文化財団 顧問)

小林治平    (日中交流研究所 研究員)

杉山直隆    (ジャーナリスト 朝日新聞記者OB)

関 史江    (東京大学大学院工学系研究科 技術アドバイザー)

谷川栄子    (日本大学国際関係学部 非常勤講師)

塚越 誠    (書家、日中文化交流の会 日本代表)

塚本慶一    (杏林大学 教授)

山中正和    (公益財団法人日本中国国際教育交流協会 常務理事)

公平を期するため、二次審査では応募者氏名と大学名は伏せ、受付番号のみがついた対象作文を先生方に配布しました。

本年も審査は難航いたしましたが、二次審査にて上位入賞作文が決定しました。審査下さった先生方に心から感謝いたします。

【三次審査】

二次審査後、得点の最も高い学生に、国際電話による口述審査を行いました。口述審査で得た点数と第二次審査の合計点数を合算して、最優秀賞候補者と一等賞候補者五名を選出しました。

【最終審査】

第三次審査で選出した最優秀賞候補者と一等賞候補者六名の作品を北京にある日本大使館に送り、最終審査を行い、日本大使賞受賞者を決定していただきました。あらためてお礼申し上げます。

■賞について

審査に基づき、応募者の中から百十一名に賞を授与いたしました。最優秀・日本大使賞一名、一等五名、二等十五名、三等四十名、佳作五十名。

また、各協賛団体の賞に選ばれた方にも賞状が贈られました。

胡万程 国際関係学院(神奈川県日中友好協会賞)

崔黎萍 河南師範大学(神奈川県日中友好協会賞)

曹珍   西安外国語大学(神奈川県日中友好協会賞)

何洋洋 蘭州理工大学(神奈川県日中友好協会賞)

劉念   南京郵電大学(神奈川県日中友好協会賞)

顧威   中山大学(日中国際教育交流協会賞)

李爽   長春理工大学(日中国際教育交流協会賞)

 

■園丁賞

学生たちの日本語は、指導教官なくしてはありえません。そのため、日中国交正常化三十五周年にあたる第三回コンクールから、学生の作文指導に業績ある日本語教師を表彰する「園丁賞(第三回の園丁奨より改称)」を創設しました。

応募があった一七一校の中から、一大学で百本以上の応募があった六大学に賞状の他、記念品として五万円相当の日本僑報社発行書籍を、一大学で五十本以上の応募があった二十大学に賞状の他、記念品として二万円相当の日本僑報社発行書籍を贈呈しました。学生のために、活用していただければ幸いです。

受賞大学は、次の通りです。( )内は応募者数。

上海市甘泉外国語中学(一九五)、浙江万里学院外国語学院(一八四)、大連大学(一八一)、湖州師範学院(一七一)、浙江越秀外国語学院(一四九)、湘潭大学(一三四)、上海海洋大学(九九)、長春理工大学(九四)、西南交通大学(八九)、華僑大学(八六)、黒竜江大学(八六)、東北大学秦皇島分校(八六)、吉林華僑外国語学院(八〇)、青島農業大学(八〇)、大連交通大学(七五)、河南科技大学(七二)、延辺大学(六三)、嘉興学院平湖校区(六三)、曲阜師範大学(六三)、四川外語学院成都学院(六一)、山東大学威海分校(六〇)、天津工業大学(五三)、長沙明照日本語専修学院(五二)、浙江理工大学(五一)、山西大学(五〇)、中国海洋大学(五〇)。おめでとうございます。

 

■今年の特徴と感想■

中国人の日本語作文コンクールも今回で七回目を迎えることが出来たことは非常な喜びです。そのうえ、今回は過去最大一七一校三一二七の作品が寄せられ、なおかつ五十以上の作品を応募した学校も二十六校あり、その中でも六校が百以上の作品を送ってくれました。このことは、応募者はもとより指導された先生方の熱意とご協力の賜物と厚く御礼申し上げます。

いまや世界第二位の経済大国となった中国。その中国は「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌し、世界各国の企業がその市場を開拓すべくしのぎを削っている。日本の企業もご多分に漏れず多数中国へ進出し事業を拡大するべく努力しているが、その努力も実らず撤退する企業が多々見受けられる。今回のテーマ「日本企業に伝えたい中国人消費者の本音―中国で成功するために日系企業に必要なこと―」に応募してくれた作品には、若者の目で見、感じたことなど成功するためのヒントが数多く提言されている。

作文の中に、『日本が経済発展してきた過程において「お客様は神様です」をモットーに親身、親切、品質、アフターケアの精神で励み、品質の向上、サービスの充実が図られ、日本製品は世界の人々から愛用された。しかし、時代とともにその精神が薄れ、良いものは必ず売れるという無意識のうちの自信過剰に対し警鐘を鳴らしてくれている。』とある。

また、三月十一日、宮城県沖を震源とする地震にみまわれ、地震列島の日本においても過ってないほどの巨大地震は東日本に甚大な被害を与えた。その後に発生した巨大津波は、東日本沿岸の市町村を飲み尽くし、多数の建物を破壊し、多くの尊い命を奪った。これらのニュースは連日世界に発信され、世界の人々の知るところとなり、さっそく中国をはじめ世界各国から「頑張れ!日本」と支援の手をさし述べてくれた。

そこで、我々も共に頑張ろうと「がんばれ日本!―千年に一度の大地震と戦う日本人へ」のテーマを緊急に追加した。中国においても二〇〇八年五月十二日「四川大震災」、二〇一〇年四月十四日「青海地震」の体験が残っている中でのテーマのため関心も高く、作品には自分自身のことのように連日のニュースに涙を流し、共に頑張る気持ちにあふれた温かく、感動を呼ぶ作品が多く寄せられた。

毎回のことではあるが、中国の若者の日本語能力の高さには感心させられる。応募された作品はどれも力作ぞろいで、懸命に努力した跡がうかがえる作品が多く、甲乙つけがたいところではあるが、これも審査の非情なところ当落を付けざるを得ない。

おわりにあたり、今回の応募作品の中に文字数の規定(一五〇〇〜一六〇〇字)から大きく外れている作品が多く見られた。これらの作品はみな力作ぞろい。作者はこれらの作品を仕上げるのに、どれほどの苦労をしたことであろうか。このまま埋もれさせるのが何とも忍びない。規定文字数になるよう修正し、次回の応募作品としたらいかがでしょうか。

 

■本書の刊行経過■

 

日中交流研究所は、二〇〇五年から日中作文コンクールを主催し、第一回から作文集を刊行して参りました。今回で第七冊目となります。第一回からのタイトルは順に、『日中友好への提言』、『壁を取り除きたい』、『国という枠を越えて』、『私の知っている日本人』、『中国への日本人の貢献』、『メイドインジャパンと中国人の生活』で、これら六冊の作文集は多くの方々からご好評を賜っております。また、『壁を取り除きたい』は、二〇〇六年度の朝日新聞書評委員の推薦図書にも推薦されました。

在中国日本大使館は第一回から後援してくださっていますが、第四回より、さらに日本大使賞を設け、宮本雄二大使と丹羽宇一郎大使にはご多忙のなか、自ら大使賞の作文を審査していただきました。ここであらためて、宮本大使と丹羽大使をはじめ、大使館関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。

また、第二回からご支援いただいている日本財団笹川陽平会長と尾形武寿理事長の本活動へのご理解とご支持に御礼を申し上げます。

そして、宮本雄二大使と石川好先生のお陰で、第七回より協賛いただくことになった(株)ドン・キホーテ代表取締役会長、財団法人安田奨学財団理事長安田隆夫様には、奨学金制度の設立など、多大なご支援を賜り、中国の学生たちの日本語学習の励みなることと、心より感謝申し上げます。

人の痛みを自分の痛みのように感じ、悲しみによりそう、人の成功を願い、共に喜びを分かち合う。学生にできて、何故大人にはできないのでしょう…日々もどかしさを感じつつ、これからも国家の壁を乗り越え、同じ「人」として、理解し合える日が来るよう、これからも相互理解促進に尽力して行きたいとおもいます。

 

なお、本書に掲載いたしました作文は、最低限の校正しか行わず、日本語として不自然な部分が多少あっても、学生の努力のあとが見えるものと考え、残してあります。ご了承ください。

最後に、今回本書のタイトルは作家の石川好先生がつけて下さいました。ここに御礼申し上げます。 

 

■謝辞■

本コンクール開催及び本書を出版するにあたり、いつも多くのお力添えをしてくださいます、各団体、個人の皆様へ心より感謝の意を表します。

【協賛】(株)ドン・キホーテ、安田奨学財団、朝日新聞社、日中文化交流センター、中国留学生交流支援立志会、(財)日本中国国際教育交流協会、神奈川県日本中国友好協会、米山ファッションビジネス専門学校

【協力】NPO法人日中交流支援機構、日本湖南人会

【後援】在中国日本国大使館、人民日報社人民網、日中友好会館、日中文化交流協会、日中友好議員連盟、日中友好協会、日中協会、日本国際貿易促進協会、日中経済協会、中国日語教学研究会、中国中日関係史学会、中国日本友好協会、(財)霞山会、(財)経済広報センター

 

また、ご協力いただいたにもかかわらず、失礼ながら今回お名前を挙げることができませんでした多くの先生方へも、この場を持ちましてお礼の言葉とさせていただきます。

                               

                      二〇一一年月十一月吉日

 

 

(日本僑報社『甦る日本 ! 今こそ示す日本の底力』より転載)