日中関係問題を考える良書 『第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集』序文 日本財団会長 笹川陽平 第二回「中国人の日本語作文コンクール」の入賞作文を読んで、これは日中関係問題を考える良書だと率直に感じました。 本コンクールは、日本僑報社・日中交流研究所が二〇〇五年から主催し、本年で第二回目となります。大変困難な状況の下、中国政府においても民間交流の重要さを指摘されています。この本は日中両国の民間交流と相互理解のために大いに役立つ良書であります。 今回の応募作文は、中国の二四省市区、一〇九大学から一六一六編の応募があったそうです。中国全土からこのように多くの学生が日本語作文コンクールに応募していることから、中国の大学生たちの中に、日本語や日本文化などに高い関心をもつ人々、日本を理解しようとする若者が大勢いることがうかがえ、安堵する思いです。 本年の最優秀賞受賞作品のタイトルは「壁を取り除きたい」。受賞者の付さんは、次のように書いています。「あの日本人の友達と同じように、もっともっと多くの中国人に『ありのままの日本』を伝えたいのだ。小さいことでもいい、自分が知っている真実の日本の姿を中国人に知ってもらいたい。そして、同じように、日本人にも真実の中国の姿を知ってもらいたい。それを積み重ねていけば、壁が少しでも取り除けると、私は信じている」。まさしく、こうした細やかで地道な交流が日中関係の根幹を支え、彼ら若者こそが日中間に存在する数々の問題を超える力となるだろうという、力強い気持ちにさせられます。 二〇〇二年に日本僑報社から出版されました拙著『二千年の歴史を鑑として――二十一世紀における日中民間交流のあり方』(日中対訳版、上の写真は中国語版の表紙ですーー編者)の中でもご紹介させていただいておりますが、我々もまた、両国間の関係改善には民間の力が必要と考え、笹川日中友好基金の活動、中国人医師二〇〇〇人の日本の大学研究所での教育、中国の各大学における奨学金制度や一四〇万冊の図書寄贈などを行ってまいりました。この作文コンクールは、こうした若者たちの日本語教育を応援することであり、ひいては日中両国に関わる諸事業に携わる者、日中外交に努める人材を育成するということでもあります。我々はこうした人材育成をバックアップしていきたいと考えております。 本コンクールが今後とも継続され、日中関係に携わり、壁を取り除こうとする若者たちの一助となることを期待しております。 (※本文は『壁を取り除きたい――第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集』より転載。『壁を取り除きたい』は2006年11月30日より発売。定価1800円、ご予約注文先はhttp://duan.jpへどうぞ) |