中国東南地域の民俗誌的研究-漢族の葬儀・死後祭祀と


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中国東南地域の民俗誌的研究-漢族の葬儀・死後祭祀と
\10,780
第16回華人学術賞受賞作品

〜文献とフィールドワークから見えてくる
       漢民族の祖先・霊魂・死後のイメージ〜
 
●葬儀のプロセスと葬法の歴史的変遷
 中国人は伝統的に死を重視し、死後も魂が生き続け、霊魂は別世界
 へ行くという観念のもとに、階層別に葬儀のプロセスが細かく規定
 されている。明朝、清朝の文献資料をもとに、庶民から帝王の葬儀
 までの事例を検討する。また、土葬・火葬をはじめとする葬法の歴
 史的変遷、体・肉体・骨をめぐる認識から分かる漢民族の霊魂観、
 「巫」と呼ばれる霊能者の役割などを考察する。
●死後祭祀から分かる多様な霊魂観
 中国東南部の祭祀事例の記述とフィールドワークを通して、この地
 域の漢族における死が「正統的な死」と「正統ではない死」の二つ
 に分けられ、祭祀の様式が異なることを指摘する。また、福建省な
 どで見られる「中元節祭祖」「普度」と呼ばれる民間祭祀は、正統
 な祖先だけでなく「家鬼」(救済が必要な祖先)、他者の霊という
 三種類の霊を祀る複合的霊魂祭祀儀式であると述べる。
●墓と墓地の形態と漢族の他界観
 死者を丁寧に扱い、葬儀を通してあの世へ送り出す漢族の他界観を、
 墓と墓地の形態から解読し、その文化的機能を提示する。他界の存
 在とその構造、人と他界との媒介役の働きのほか、地表墓の源流と
 その変遷、墓の形と風水観念との関連、墓地から分かる多様な他界
 の構造などを探る。最後に新しい課題として、都市化し家族構造が
 変化した現代の漢族における死の慣習の多元的展開をまとめる。
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マスコミに取り上げられたこの本の 書評はこちら
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【目次】
【序論 課題と方法】
  一.問題提起
  二.先行研究
  三.研究対象と研究方法
【第一部 葬儀と葬法の解読】
 第一章 階層と葬儀
  一.史上の民葬と国葬・公葬
  二.調査で知る民間葬儀
  三.葬儀から見えるもの
 第二章 葬法とその変遷
  一.土葬の歴史的展開
  二.火葬の歴史的展開
  三.浙江・福建における葬法とその展開
 第三章 葬儀葬法と霊魂
  一.魂魄説
  二.魂の居場所
  三.霊魂との交流――巫の役割
【第二部 死後祭祀と祖先観】
 第一章 死の正統性と非正統性
  一.死の種類と扱いの相違
  二.文献で知る死後祭祀
  三.調査で知る死後祭祀
 第二章 「中元節」の主役
  一.地方誌からみる中元節・普度
  二.調査地の事例
  三.祀られる主役たち
 第三章 死後祭祀の深層
  一.祖先観に関する観察
  二.祖先との交流:必要性と方式
【第三部 墓と墓地の深層】
 第一章 墓・墓地の形態
  一.葬法と墓の形態
  二.墓地の形態 
 第二章 墓と"風水"
  一."風水の宝地"へのこだわり
  二.風水と祖先
  三.墓参りと墓守りの深層
 第三章 墓地と他界
  一.多様な他界構造 
  二.他界構造の解析 
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【著者略歴】
 
 何彬 (首都大学東京教授)
 
 北京市生まれ。北京師範大学外国学部日本語専攻、卒論は日中昔話
 の比較研究。卒業後、日本語教師を務めた後、同師範大学大学院中
 国文学部修士課程に入学。鍾敬文教授、張紫晨教授に師事、専攻は
 民間文学、研究テーマは日中民俗比較研究。
 修士課程在学中に日本留学、指導教官は福田アジオ教授。日本の民
 俗学研究史、日本の両墓制をテーマに修士論文を執筆。1989年帰国
 後博士後期入学、浙江省、江蘇省を中心に墓制、葬制を題に博士論
 文執筆、文学博士学位取得。
 東京大学東洋文化研究所外国人研究員等を経て、1998年に東京都立
 大学文学部副教授として就職、2007年首都大学東京人文社会系教授、
 現在に至る。2011年3月、歴史民俗資料学博士学位取得。
 主な研究対象は日本と中国及び東アジア地域の地域文化、民俗及び
 華人・華僑研究。中国民俗学会常務理事、国際アジア比較民俗学会
 副会長、日中口述歴史文化研究会副会長、日中人文社会科学学会理
 事などを務め、研究成果の交流及び社会還元、異文化の相互理解に
 積極的に活躍している。
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【著者のことば】
(序論より)
 東南地域の漢族は、人は死後でも霊魂が生き続くという観念を持っ
 ている。しかし、その死後の霊は、一定の基準により三分類され、
 その分類により葬儀と死後祭祀の扱いは違ってくる。この霊の判定
 基準を本論の研究で明かにする。なお、死後霊魂観において、よく
 知られている「魂魄説」について「民葬」レベルでの検討は第一部
 において展開した結果、北方中心の上層階級の文化による観念と、
 東南地域の庶民層の意識との間にズレがみられることを指摘する。
 そこで、魂魄説を再検討した結果を提示したうえで、本研究では漢
 族全体における霊魂観、魂魄説の再認識、再定義を提言する。
 漢族は祖先を尊重し、祖先を祭祀する祖先祭祀の民族として知られ
 る。通常、誰でも生物学的な親がいれば、その親が死後自分の先祖
 となりそうなものである。しかし、漢族では、文化的な「祖先」と
 なるために一定の資格が必要であり、死後祖先になれない人もいる。
 その「祖先」の資格の内容と資格を得るための「救済措置」及び
 「祖先」の内部構造や祖先観の構造については本論の第二部で論述
 し、東南地域の祖先崇拝の対象を解析する。
 第三部では、死後他界観に基づき死者を丁寧に扱い、葬儀を通して
 死者をあの世へ送り出す漢族の他界観の解読を展開する。そして、
 他界の所在と他界の構造、人と他界との交流を媒介する存在、その
 媒介役の働きによって、人々がさらにあの世の存在と霊の存在を確
 信することを議論する。また、地表墓の源流と変遷や墓の形と風水
 観念との関連、墓地と他界との関連についても、第三部では論を展
 開し、墓の持つ文化的な諸機能を掲示する。
 本書は以上の論述を通し、中国の東南地域における漢族の研究に新
 たな視点と展望を提示することを努める。本論の研究結果は、今後
 の漢文化を再認識する新たなきっかけになることを目指す。
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書名:『中国東南地域の民俗誌的研究――漢族の葬儀・死後祭祀と墓地』
著者:何彬
出版:日本僑報社
判型:A5判320頁上製
定価:9800円+税
発行:2013年12月18日 
ISBN:978-4-86185-157-5 C0036
注文先:http://duan.jp/item/157.html


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