第四回 日本人の中国語作文コンクール

開催報告・編集後記

 

 

 

 

2005年から日本僑報社・日中交流研究所が主催している「日本人の中国語作文コンクール」は、御陰様を持ちまして、第四回を無事に開催することができました。今年もまた多くの困難に直面いたしましたが、こうして受賞作品集をお手元にお届けできることは、応募者の皆さんをはじめ、関係者の方々のあたたかいご支援、ご協力の賜物と心より感謝し、厚く御礼申し上げます。

また、去年の2007「日中文化・スポーツ交流年」認定事業に引き続き、2008「日中青少年友好交流年」認定事業として開催されました。ささやかながら日中友好の一翼を担えたことを喜んでおります。

北京オリンピックと日中平和友好条約締結30周年を記念して行った第四回は、次の二部門を設けました。論文部門の「日中WINWIN関係を築くには」とノンフィクション部門の「私の知っている中国人」です。

第四回は、総計147本の作文の応募がありました。24都道府県、海外3都市の幅広い年齢層の日本人(788歳)から応募があり、あらゆる世代が参加したといえましょう。応募作品はいずれも秀作で審査は難航しましたが、厳正な審査の結果、200824日に優秀賞36 佳作賞43が決定しました。

 

■審査の経過■

 

【一次審査】第一次審査は、在日中国人ジャーナリスト、共同網の王征さんと段躍中が行いました。審査開始前に、応募作品のうち、規定文字数に満たない作品を審査対象外としました。審査対象作品を2名がすべて読み、中国語の文章力50点、内容50点で採点しました。2名共に高得点を付けた作品をまず入賞候補とし、どちらか1名が高得点を付けた作品は再度読み合わせをし、複数回にわたって審議した上で入賞候補作品を決定しました。

 

【二次審査】次の6名の先生方がボランティアで協力してくださいました。

人民日報東京支局長于青先生、中国国際広播電台(北京放送)東京支局長張国清先生、人民網日本版主編陳建軍先生、東洋学園大学教授朱建栄先生、千葉商科大学教授趙軍先生、小尾羊日本株式会社社長王明琳先生。

日本僑報社社長張景子、段躍中も第二次審査に参加しました。

公平を期するため、二次審査では応募者氏名と所属名は伏せ、受付番号のみがついた対象作文を先生方に配布しました。

本年も審査は難航いたしましたが、二次審査にて上位入賞作文が決定しました。審査下さった先生方に心より感謝いたします。

 

【三次審査】二次審査後、最優秀賞候補者に電話による口述審査を行いました。ノンフィクション部門を中心に、「真人真事(偽りのない真実)」であるかどうか、作文がどのように書かれたかを中心とした中国人による質問を行いました。

 

■感想■

 

主催者として、感想を少し述べたいと思います。まず、中国語のレベルが高い作品が多いというのが大きな特長です。審査も難航しました。

学生の部・最優秀賞(中国大使賞)の受賞は、神戸中華同文学校5年生の景山英雄くん(11歳)。テーマ「私の知っている中国人」として、クラス担任の先生について書かれた作文には、厳しいながらも優しい先生の姿が、生き生きと描かれています。中国語と中国地理の科目が好きで、大きくなったら先生のようになりたい、という景山くんの将来の夢は、外交官になって日中友好に貢献することです。

社会人の部・最優秀賞(中国大使賞)は、北京市からご応募いただいた主婦の板倉佳奈美さんです。2004年から「夫と二人の息子と共に北京で暮らしはじめた」経験から、作文をまとめられました。最初は「謝謝」「再見」など簡単な中国語しか知らず、日本人がほとんどいない環境だったのでとても苦労したとのこと。しかし、逆にたくさんの中国人と友達になる機会に恵まれ、メディアではあまり報道されることのない「素」の中国を知ったという板倉さんの受賞作文は、北京の市場で中国人と交流する様子を描いています。「貧しくても他人に優しく、そして前向きで力強く生きている彼らには、本当に励まされる。…行きは聞き心地の悪い自転車のギーギーという音が、帰りは友人たちの励まし声に聞こえてくる。」と新鮮な目で中国の現実を記した点が、審査員から高い評価を得ました。

応募者には、特に小・中学生の存在が目立ちました。第二回(2006年)学生の部・最優秀賞受賞者、安部京さん(当時8歳)、第三回(2007年)学生の部一等賞の布施望くん(当時9歳)に引き続き、多くのご応募をいただきました。日中友好に携わる機会の乏しい小・中学生に大きく門戸を開き、次世代の育成に貢献することができたことは、意義があるのではと思います。

また、留学生組が上位入賞をしめたのも驚きでした。やはり、留学というのは語学や文化を学ぶ上で、高い効果が認められるのだと思いました。同時に、留学の成果を発信していく場として、本コンクールも存続していきたいと思います。

 

■本書の刊行経緯■

 

本年の受賞作品集の書名は、学生の部最優秀賞の景山英雄くんのタイトル「私の知っている中国人―私のクラス担任の先生」、社会人の部最優秀賞の板倉佳奈美さんが書いた「私を励ます人たち」からまとめました。第四回「中国人の日本語作文コンクール」受賞作品集『私の知っている日本人』と対になるタイトルです。

民間の力が、今後の日中交流に必要です。民間人一人一人の力は小さくとも、共に手を携え、誤解が生まれても語り合うことで解消し、WIN WIN関係へと発展させていくこと。率直な意見を日中二か国語で発信することに本書の意義があると考えています。

そして、当研究所では、「一般の人々」、つまり両国の国民による両国の友好を支える基盤となる人々の提言が、広く伝わるよう取り組んでいます。特に『作文』は文章を通じて人をつなぐもの。受賞作品集の本書が日本の中国語学習者からの提言として、市井の人々のまなざしを反映し、日中相互理解の一端を担うことを心より願っております。

本書に掲載しました作文は、最低限の校正しか行わず、中国語として不自然な部分が多少あっても受賞者の努力のあとが見えるものと考え、残してあります。日本語の訳文は、全て本人が翻訳したものです。そのため、全体としては不統一と感じられる部分もあるかと思いますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

 

■謝辞■

 

第四回「日本人の中国語作文コンクール」は、多くの方々からご支援を賜らなければ、決して開催することはできませんでした。

まず、中国大使館、特に崔天凱大使、孫建明公使参事官、許澤友総領事、張社平大使秘書官、劉敬師一等書記官、魏嗚原二等書記官をはじめとする大使館関係者の皆さんに御礼を申し上げます。

そして、人民日報社人民網、国家漢語国際推廣領導小組辧公室、中国青年報、北京青年報、(財)日中友好会館、日中文化交流協会、日中友好議員連盟、(社)日中友好協会、(社)日中協会、日本国際貿易促進協会、(財)日中経済協会、日本華人漢語教師協会、日本中国語検定協会、日本中国友好協会、日本ビジネス中国語学会、中国国際放送局日本語放送、中国語教育学会、人民中国雑誌社にご後援いただきました。2008「日中青少年友好交流年」実行委員会にも、認定事業として正式に認定いただきました。

今回、小尾羊ジャパン株式会社(王明琳社長)から特別協賛いただきました、心から感謝いたします。また、中国南方航空カシオ計算機国際人材交流協力支援機構IPEX)からもご協賛いただきました、厚く御礼を申し上げます。

ほか、応援下さった次の方々のお名前を記し、感謝を表したいと存じます。東京華僑総会符易亨会長、杜食品工業株式会社野崎宏社長、早稲田大学大学院博士課程留学生の趙新利さん、また第二次審査員の先生方に、改めて感謝申し上げます。

最後に、ご応募いただいた学生や社会人の方々に、改めて感謝とエールを送ります。そして、各学校の指導教官の先生方に御礼申し上げたいと思います。日中交流にかける気持ちがにじむ作品の数々は、胸に響きました。来年のコンクールにも、ぜひまた挑戦していただきたいと思います。

 

日中交流研究所長 段躍中 

  2009.2.24